第3話 月額8980円(税込)
【前回までのあらすじ】
「って感じ」
俺があらすじを書き終える。
「前回、ストーリーは進んでないですね」
とコロニス。
そう。あらすじは文面が少し変わっただけ。
「まあなんかノリだけで文字増やしてるから」
「それで、仮のタイトルとかあるんですか?」
「うん。何も考えずに『女神さま』って仮のタイトルをファイル名にしてる」
「まあ呼び方として一旦決まってたら都合いいかなってだけなんでそれでいきましょ」
「じゃあ『女神さま』の続きいこうか」
▼
「女神は女神なのです。天使は初段から6段まで階級があって、4段から上はよほどの実績でもなければそれぞれ100年の時間を経ないと段位昇格の権利を得られないのです。だから女神は失敗すると天使5段になるのです」
「その説明今する必要ないでしょ」
「ないのです。もぐもぐ。設定説明するより登場人物のアクションリアクションを描いた方がいいといいます。あなたも食べるとよいのです。女神がひとりで食べていると食事にいく仲間もいないぼっち女神に見え。女神も友達いるもん。女神になったから同僚の天使と一旦会えないだけだもん。焼き羊羹どうぞ」
「あなた自身が受肉して、下界で2年以内にベタな伝説をつくるとかどうでしょうか」
彼はもののためしに焼き羊羹に箸を伸ばす。
「あ。──それは考えていなかったのです。てっちゃんは安いのに食べ放題でもつい食べる」
「自力でなんとかして。で、俺は元の世界に戻して」
彼は焼き羊羹をかじる。羊羹をはふはふして食べる新感覚。
(焼いてうまいもんでもない。やっばり)
思いながらも自分も脱線したら収集つかないので言わない。
女神は焼いたタンを口に運ぶ。
「ではあなたには提案した責任があるので女神と一緒に地上でベタな伝説になってもらいます。ビールビール。そろそろ炭酸飲料も欲しい」
「俺も? わかりました。ここであなたとふたりきりでいるよりマシでしょうし。レモンハイもらえます?」
「そろそろ読者からもいい加減にストーリーを進めろと思われてると思います」
レモンハイがテーブルに現れた。
「読者?」
彼はグラスを傾ける。
▲
「読者? 大丈夫ですか」
「うんほら、女神が考えてないからこんなことになって」
「これってつまり、『コロニスといっしょ』というメタ作品の中の作中作の中でメタ表現してるっていう。読者が白ける恐れがあるんでは?」
「そうなるかどうかいっぺんやってみたい」
「まあやってみましょう」
「そうそう。好きにやっていくよ」
「わたしたちが楽しむことが主体ですね」
▼
「……そうです。読者です」
「まさか、ここは……。風景が具体的じゃないと思ったらこれは文章表現の世界。まさかここは小説。ひょっとして箸にも棒にもかからんい上、完結することさえ難しい素人Web作家の小説なんやないですか?」
「いいえ違います。女神がつくった世界なのです。女神が新作小説を書くために設定を考えるのが面倒くさくてあなたを召喚して設定やストーリーをあなたに丸投げするための装置としてこの場を設定したわけではありません。飲むわ。ぽりぽりぽりぽりぽりぽり」
「女神って、あんたがもしかして素人Web作家か」
「そんなことはありません。女神は女神です。もう女神は女神ですって6500万回言いました」
「そこまで言ってない。数えてないけど」
「女神が面倒なので丸投げするのは事実です。あなたは自分で設定をつくって世界を組み立てるのです。一本の物語の主人公になるのです。自らの力で」
「戦うべき敵とか、例えば魔法とかも俺に自分で考えて用意しろと」
「そうです。あまりつまらない展開をすると読者はつきませんが、あなたが生きて何かをしている限りは物語は続きます。それが面白いかどうかとか関係ありません。女神は楽に世界を構築して主人公が動いている世界ができればそれでいいのです。だからベタでいいのです。尖ったことはやらなくていいです。むしろそういう欲は捨ててかかったほうがうまくいくと思います。ぽりぽりぽりぽりぽりぽり。ごくごくごく」
「そういやGoogle日本語入力使ってるとか完全にあんたタイピングして小説書いてる人でしょ」
「いいえ女神は女神なのです。音声入力もフリック入力も併用してます」
「自白してるやん」
「もちろん冗談です。女神は女神なのです。作者はその世界の創造主なのです。女神とは別の存在なのです」
「そういう話はアウトやないん?」
「アウトでもいいのです。世界は複雑なのです。女神が女神であることは本当なのです。例えば今の会話も50代の無職のおっさんが書いていたとしては女神は女神なのです。焼き羊羹の食感も本物なのです」
「50代の無職のおっさんがGoogle日本語入力とフリック入力と音声入力を駆使して書いてる」
「ATOKも使ってます」
「ジャストシステムな」
「ツッコミのパターン変わりましたね」
「ときどき変えていかないと」
「あくまで女神は女神です。フィフティでノージョブのアンクルじゃないです。ものの例えです」
「カタカナ英語に言い換えられても。アンクルって血縁の叔父(伯父)では?」
「女神もそろそろ読者に飽きられてると思います」
「じゃあ地上に行くとして。その前にいくつか確認しないといけない」
「確認しなくても食事は全部おごりますよ。ちゃんとエロ動画の月額8980円(税込)も毎月こちらで払っておきます」
「なにげにいいプランに入ってくれてる。いや、確認したいことは」
「ちゃんとアニメも特撮も観たいんですね。わかりました」
「いやそうじゃなくて」
「いらないですか?」
「そりゃあるに越したことはないですけど」
「じゃあ解決ですね」
「いや確認したいのは」
「まあなんとなく色々足りてない気はしています。」
▲
「作者が50代無職のおっさん……」
「いやそれは秘密やから。というか、これはこの作中の女神が
「まあそんなところ気にしないかもしれませんね」
「年齢のことはあまり考えたくない──」
「考えずにいきましょ。あ、ほら紅茶入れましょか。お湯沸かしますから。ミルクティーでしたね」
「ありがとう」
コロニスに気を遣わせてしまった。
けどまあせっかくここまで書いたんだし、開き直って続けよう。
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