第41話
まあなんて事もねえんだが、細かくそれを。
気にする必要もねえんだって話だ。
頭が回らねえ時は寧ろ、決して言葉へは出さずに。
只黙って考えてりゃ~、良いだけの話だ。
チョット待ってろ、今考えると。
そんな事を言わなくても、只黙ってても良い。
黙秘ってのも一つの、その戦略だからだ。
逆に充分に、それが相手を混乱もさせる。
要はそれも戦術・戦法の、その一つだって話だ。
(俺)(雲行きが怪しいってのか…???まさか何か…???突拍子もねえっ度デケエ話を…俺に持ち掛け様ってつもりなのか…この連中は…???)。
又10秒程の間が在った。
参謀の「本田」がユラユラと、自分の右足を揺らし始めた。
コイツの利き足は右足だ。
先程からの俺とのこの交渉のその際にも、その説明序でに。
身振手振りで動かして来た、その利き手の動きでも判る。
「本田」は一瞬下を向いて、直ぐに自分の左へ。
その眼を流した。
人が考える際の、その習性と特徴だ。
人が練り込んだ自分の意思や、その際に伝える為のその言葉を。
選択し作り上げる際の、その思考回路は。
言語機能を司る、左脳側へと在る。
コイツは今俺に、どう自分達の意向伝えたら。
俺がそれを飲み込むしかねえのか…???
今其処を考えてる。
逆に直感を司る、脳の思考機能回路は。
やや右脳側へと在る。
「本田」は更に、一瞬でその瞳を。
右側へと移した。
(俺)(来る…)。
(本田)「お前と斎籐との喧嘩…其処迄は良かった…寧ろ考えて見りゃ~今…お前の言った通りに…その道理としても…此方が…ってか斎籐が悪い…それは一応…謝っとこう…悪かったなっ…しかしその後が悪い…」。
(俺)「何だその後ってのは…俺はヤツに…しかも後ろから不意に突き飛ばされただけで…俺は全く悪くねえ…んでその後は…これも道理で…謝れって言っただけだ…謝るのは当然…あの馬鹿の方で…あの馬鹿はそれすらもが出来ねえ…んで謝らねえ…だから取り敢えず…この場を納めに来たお前等が…んで俺に…自分達の話を聞いて貰う為にも…今あの馬鹿の代わりに…お前が謝った…しかし俺とすればお前に謝って貰う…そんな義理なんかは…端から全くねえ…そんな筋も…全く持っちゃ居ねえっ…んで俺の気持ちは…そんなんじゃ全く…スッキリとする訳はねえんだから…アイツへ謝らせろと…そう言ってんだっ…それで良いじゃねえか…???」。
(本田)「いや…それだけじゃもう…済まなく成っちまったんだ…」。
(俺)「何がだてんだよっ…何が済まなく成っちまったってんだ…???気が済んでねえのは…此方の方なんだぜっ…その意味は判るよなっ…???」。
(本田)「ああ…その意味は判る…処がお前が校門へ迄に来て…まあコレも斎籐が…此方が悪いのかも知れねえが…斎籐が他の連中達に言った事で…お前と俺達○○連合とが…喧嘩に成っちまった…」。
(俺)「ああ…???だから…???だから何だ…???それもあの馬鹿野郎が…何を言ったんだか…???俺りゃ全く知らねえが…その斎籐の話を…丸っきし鵜呑みにした…オメエ等が悪りィんだって…んな話だろう…???」。
(本田)「確かにそれもそうだ…んで職員室で…お前と斎籐が怒られて…帰って来た後で…今度はお前が…俺達へ喧嘩を売った…」。
(俺)「そりゃしょうがねえだろう…???俺はもう既に…しかもこの学校へは…殆んど始めて来たその日で…願書は出しに来たかなっ…???まあ良いや…来たか来ねえかは…???端から興味もねからもう…忘れちまった…んでその校門の前で…お前等20~30人へ俺は…危うく袋叩きにされそうに成ったんだぜっ…もう後は自分の腹を決めてでも…勝負するしかねえだろう…???お前等今…自分達の都合の…その話ばかりをしたがってるが…じゃあ単身…お前等の組織と…今も勝負をしてる…少しは俺の方の…その身にも成って考えて見ろよっ…此方の方とすれば…俺だってお前自分の…しかも一生に1回しかねえ…自分の高校の…その入学式にだぞっ…20人も30人もの…訳の解らねえ不良共を相手に…???喧嘩し様なんて…どう考えても…んな訳はねだろうが…???本当にお前等はさっきからずっと…今まるで自分達が…まるで追い込まれたかの様に言ってんだが…実際端から追い込まれてもう…【死地】へと近い状態へ立たされてんのは…寧ろ俺の方なんだぞっ…それも含めて俺がお前等に…喧嘩を売ったとでも…???そう言いたい訳か…???そりゃとんでもねお門違いで…単なる言い掛かりって話だっ…」。
(本田)「まあそう言う事だなっ…」。
アッサリと認め遣がった、それでも未だ何か…???
俺と交渉の出来るその何かを…???
コイツは考えて居て…???
それを持って来たんだって、んな話か…???
再びの沈黙、無言の間が続いた。
今度は俺から、この間を破って切り出した。
コイツへ考えるその間を与えると、余計に話がややこしく。
成りそうだからだ。
(俺)「じゃあそれを…認めたってんだなっ本田…???」。
俺はもう単刀直入に、そう突っ込んだ。
「本田」は答えられない、俺の眼を凝視した儘で。
自らの息を詰めた。
(俺)「認めたんならもう遣る事は…決まった様なモンだ…お前はもう連合を代表して…俺に謝った…後はあの馬鹿へ謝らせろ…それでもうチャンチャンだ…この話しはコレで…全て終了だっ…もう充分だっ…」。
更に俺は追い討ちを掛けた。
交渉相手の2人は、その場で自分の息を。
まだ詰まらせて居る。
俺が矢継ぎ早に、逆にこの連中達の2人を。
追い込んだからだ。
俺は弁が立つ。
まさか此所で自分達が追い込まれるとは、「本田」も「村上」も、。
もう努々と想っては居なかっただろう。
さあそれでも、此所からが寧ろ。
軍師達のその見せ所だ。
どう出る「本田」…???
(本田)「……………」。
「本田」は全く、言葉を発せずに。
冷静に此方を、凝視し続けて居た。
返答をするその言葉に、詰まっている訳等では無い。
まるで俺の様子を、観察して居るかの様だ。
「本田」は一旦大きく、その息を吸った。
(本田)「確かに考えて見ると…この喧嘩の発端は皆俺達…○○連合が悪い…」。
(俺)「……………」。
(本田)「でも龍神…此所は俺達…○○連合の地元なんだよっ…判るよなっ…」。
(俺)「ああ…まあそりゃ判る…そして解るってか…さっきもそう言ったろ…要は体裁が悪いって…んな話だろう…???」。
(本田)「まあ早く言えば…そう言う話なんだが…」。
(俺)「早く言えばって…???どう言う事だ…???んじゃ~早く言わねえで…遅く言って見ろ…」。
(大笑い)
(本田)「おいっ龍神…頼むから今は…笑わせねえでくれ…笑わせんなら後にしてくれ…」。
(俺)「んん…本田…本田ってたか…???そりゃお前も又随分…随分贅沢な野郎だなっ…おいっ…」。
(爆笑)
(俺)「この期に及んで又序での…序のその注文かよ…???おいっ此所はお前達の…ディナー・コース会場じゃねえんだぞ…んじゃ~俺はホストか…???」。
(爆笑)
(俺)「もう此方が黙ってとっ…その注文がドンドンドンドン増えて行くって…???まさかそんなんじゃねえだろうなっ…おいっ…???」。
(大笑い)
(俺)「んで何だ…???本筋の注文ってのは…???メインディッシュは何かって…その話だぞっ…???早くそれを言えよっ…」。
(本田)「ああ…要はこの○○連合の…その地元で…俺達の地元で…俺達がお前に…負ける訳には行かねんだって事だ…」。
(俺)「んん…負ける訳には行かねえ…???負ける訳には行かねえたって…勝てねえモンはそりゃ…そりゃしょうがねえだろうが…ドジを踏んじまった自分等の身内の…その穴を取りに来たってんなら…そりゃそれで充分に…???御立派な話だが…この今回の事件とその揉め事へ関しちゃ~…端からお前等へは…勝ち目のその要素が…全く無かったってだけの話だっ…其れだけの話で…まあそれも含めて…俺の実力だなっ…運も実力の内って…そう言うからなっ…」。
(交渉人の2人)「……………」。
「本田」も「村上」も、言葉へ詰まっている。
俺はもう1度更に再び、この2人を追い込んで。
此所で1機に、話を畳み込みに入った。
(俺)「んん…???おいチョット待てよおいっ…んじゃ何か…???俺に態と…態と負けてくれねえかとでも…そう言いに来たってのかよっ…???お前等は…???まさかんな…???んな馬鹿な話し迄はしねえよなっ…???この不良の世界でか…???んな馬鹿な話じゃねえんだろう…???まさかなっ…???」。
(本田)「そう…だからこうして…俺達お前に…相談に来てんだっ…」。
(俺)「相談…???さっきと又随分…話が違うじゃねえか…???又上手い事を言ってんじゃねよ…???さっきは頼みで…今度は相談か…???んで何だよその相談ってのは…???ソイツを先に言えよ…」。
人の心へ油断が生ずるのは、その心理状態へ。
大きな揺さぶりを掛けられた、その瞬間だ。
俺がこの大きな交渉の前に、連中を笑わせたのは。
その後の緊張へ包まれる、その時を狙ってのチェンジ・アップ。
大きな変化球を、其所へ投げ込んだからだ。
この場でのその変化球とは、「緊張と緩和」ってヤツだ。
まさかたった1人で、この○○連合と渡り合う俺が。
笑い話をして来るとは。
連中も想っては居なかった。
「本田」と「村上」の2人は、まんまとその「緊張と緩和」のそのマジックへ。
取り込まれてしまったと言う訳だ。
追い込まれると「本田」の眼が、更に鋭く光った。
この際のこの連中達とのその交渉の、その勝負(しょうはい)のその行方も。
既にほぼ完璧な迄に、俺の勝ちで在る。
俺は勘が良い。
前日から練り上げた、直感から涌き出たその作戦が。
全て「功を制した」ので在る。
後は落とし処を、どう着けるかの…???
最大の問題は其処だ。
(本田)「俺達の地元…この○○で…俺達はお前に…負ける訳には行かない…」。
(俺)「ああ…さっき聞いたっ…」。
「本田」のその物言いを、俺は力強く突っぱねた。
語尾を荒げてで在る。
何度も同じ事を言うなと、そう言った意図からでも在る。
(本田)「実は俺達はこの学校内へ…俺達の副番が居る…」。
(俺)(んだそりゃ~一体…???んな事たあ~誰も…???聞いてねえよ…)。
(俺)「チョット待てお前等っ…此所がお前等の地元で…俺達へは組織の威信も在るんで…だからお前達が俺に…???負けられねって…負ける訳には行かねえんだってのは…そりゃ解った…でもそりゃ~単なる…お前等のその身勝手な…身勝手極まりもねえその事情で…そのお前等のそんは事情が俺に…一体何の関係が在るってんだっ…???それから今…副番がどうとかとかって…そう言ったけど…???言ったよなっ…???」。
(本田)「ああ…」。
(俺)「ふ~んっ…んでまさか…俺達は自分達のその地元のこの○○で…お前に負ける訳には行かねえから…その副番ってのと俺に…勝負してくれって…タイマン張ってくれってんじゃねえだろうなっ…???まさかのその…???頼み事ってのは…???」。
(笑)
まあ普通の、通常の入学式を送った一般市民へは。
こんな状況は、そりゃもう異次元の場所だろうが。
一応此所も昨日、入学式を終えたばかりの。
高校のその教室な訳だ。
教室の中へと居た、周囲の連中がポツポツと。
そしてクスクスと笑い始めた。
当然俺の大声は、特にその教室中へと。
響き渡っているのだから。
それも当たり前の話だ。
俺が態と、俺が悪くはねえんだって事を。
クラスの全員へ、先ず知らしめる為に。
大声で話してるからだ。
そうする事に因って、「本田」も「村上」も。
話を進め難く成る。
つまりはコレも俺のその、一つの「陽動作戦」な訳だ。
(俺)「んで更にはまさか…???その副番ってのが…それもまさかの…???まさかの昨日あの校門へ居た…あの色のどす黒れえ…図体のデケエ奴…黒牛…???黒い野生の猛牛見てえなっ…???あの糞怪力の…???あの相撲取りだかプロレスラー見てえな…???ヤツなんじゃねえだろうなっ…???」。
(爆笑)
(本田)「龍神…俺が想った通り…お前ヤッパリ面白れえわっ…んで又極めて…本当に勘も良いわっ…其処迄それも1人で…全て察知して居たとはなっ…ろくに情報網もねえのにだっ…そうだ…そうなんだわっ…俺達が頼みに来たのは…実はその事なんだわっ…」。
(爆笑)
まあ~この時俺がこの連中へ…???
一体どんだけ貸しを作って、譲って遣ったってのか…???
考えて見りゃ~全く、全てが筋の通らねえ。
そんな話ばかりで。
俺は随分、あの時この連中へ。
又大層な貸しを作って居た。
作って遣って居たんだと言う、んな話な訳だこりゃ。
んで更にだ。
(俺)「まあこう言う状況じゃなけりゃ…俺もお前も本当に…面白れえ友達へ…???成れたのかも知れねえがなっ…???しかし今は別だ…俺が勘が良かろうと…どんなに面白れえヤツだろうと…今のこの状況と…この場の流れの中じゃ~…此所じゃあ俺がそう誉められてんのも…全く嬉しくはねえわっ…」。
(大笑い)
話が大詰めに迫った処で、この場へ漂う。
全てのその緊張感から、俺自身と。
連中解放をする、その為にも。
一端は意図的に、其処から抜け出させるその為にも。
俺は笑いを誘った。
「勝敗は…五分を以て上とする…」
こりゃもう俺も大好きな、日本の戦国時代の武将。
甲斐の国の大将軍、【武田信玄】のその言葉だからだ。
著者・龍神 武明
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