第26話

第16部 

15歳 未だ高校1年生で 13対1 真っ向勝負 まるで【ブルース・リー】??? トイレで究極の喧嘩その①


40代の中場を過ぎて、初めて俺は。

【キングダム】ってこの国日本の、今や最高調でも在る。

あの人気漫画を読んだ。

始めにこの漫画のその主人公が見せる、その性格や性分。

遣られても遣られても、もう何度でも立ち上がる。

そんな様子を観て。

俺は少年時代、自分へ付けられたその渾名の。

【ゾンビ】を。

【ゾンビ】と呼ばれたその自分の渾名の事を、思い出した。

(俺)(何かコイツって…俺見てえだなっ…)と直ぐに、そう想ったのだ。


戦を終えると酒好きで、歯に衣着せないその物言いと。

直感力へと優れ、何処か直球勝負が大好きな。

そして不死身な男。

それが「春秋戦国時代」、全中華の統一で。

大活躍をした、大将軍のあの【李 信】将軍だっ。

まあ正式には、その歴史記述がもう。

全く無い。

つまりはこの漫画の作者が描く、その空想の人物像なんで。

本当に遣られても遣られても立ち上がる…???

そんな将軍で在ったのかどうかは、判らない訳だが。

まあ良いや、そんな事は。

それ拠りも1980年の春、俺の高校時代。

その4月の始めに起きた、あの大事件のその続きだ。


1980年春 4月


トイレの中で俺は1人、横隔膜を凹まして。

インド【ヨーガ】の、ライオンのポーズを取って居た。

実は俺は家のお袋の弟、つまりは俺の叔父さんが。

俺がまだそれも、小学校2年生の時に。

単身インドへと渡り。

このヨーガの修行を終えて、日本へ帰国をした。

その後でヨーガの指導者と成り、先生と成って本を出したその事から。

このヨーガの効果を、既に今からもう。

それも50年も前に。

1人自分の部屋でそれを始めて居て、それを良く知って居たからだ。


人の肺と胃袋の間へと在る、横隔膜のその活用に因って。

全身の血液が、見事な迄に入れ替わる。

その事や。

その為に自分の身体能力、この内特に持久力が。

短時間で最大限迄にも、極限へ迄にも引き上げられる事をだ。

2度吐いて2度吸う、この機関車呼吸も又。

同様の効果を持つモノな訳だが。

兎も角そうして、全身の毛細血管へ迄に。

先ずは大量の酸素を送り込むと。

呼吸を整えて、【ブルース・リ】の様に。

俺は大きく、自分の肩を回した。

首を回し肩を回し、全身の関節を鳴らし終えると。

一旦脱力をし、呼吸を整え。

サイキング・アップ。

当時の大相撲の横綱、【千代の富士】の様に。

自分の腕や脚を力強く、もうバンバンと叩いた。


(俺)「ウオッシャーッ…」。

当時俺の大好きだった人気漫画、最後に【1・2の三四郎】張りの。

その気合いを入れて。

大声を振り絞ると直ぐに俺は、自分の教室へと向かった。

教室の入り口の引戸ドアーへは、小振りなガラス窓が付けられている。

かなり小さ目な窓だったが、その窓からは。

中の様子がもう、充分に伺える。

此方から見れば室内の後方、教室の前方側へ。

黒板の在るその位置からは、最も離れたその奥で在る。

その場所その中央へ。

連中の内で4人が、既に陣取っている。

話をしているその様子や、その目付きと態度から。

頭の切れそうなヤツが1人。

そこそこ切れそうなヤツが1人、後の2人。

連中達は大した事はない。


こうしたその一瞬の印象から感じ取れる、人の気質や性分。

或いはその性格や知能の、その深さ高さなんかを。

俺はもうスッパリと、見抜いて当てるのが。

とても得意なのだ。

10中8・9、ほぼそれに間違いは無く。

そしてこの4人の中へ、連中の頭(あたま)。

つまりは組織のリーダーも、今此所へは居ない。


リーダーが居れば集まったその4人の内で、その中央へと陣取り。

つまりは現状ならば、真ん中へ寄ったその2人の内で。

左右のどちらかか、そうだと言う事へも成る訳だが。

この2人の内で1人は高校生と言えど、この不良の世界で。

組織の長を張れる程、それ程の風貌を持ってはいない。

ガタイ(図体)は良いがどう見ても、顔の印象は「御人好し」。

もうその儘で。

あの顔ではもうこの不良達の世界では、到底完全に舐められてしまう。

そう結構この不良の世界ってのは、見た目重視。

その風貌や見目形の印象が、とても肝心と成るのだ。


教室の後方へと集まった4人、4人の他に。

他の連中達の様子は、此所からは見えない。

入り口のドアーへと付けられた窓が、小さ目だからだ。

連中もそう想って、後ろの席の中央部。

廊下から戻って来るで在ろう俺の様子を、確認の出来るその場所として。

室内の後方、その中央部へと。

陣取ったのかも知れない。

4人の内1人が、俺と眼を合わせると。

直ぐに周りへ居た3人へ、俺が来たその事を告げた。

動かされたその口の動きとその様子で、声は聞こえなくとも。

もう充分にその判断、つまりは察しが着く。

俺はもう一度一呼吸、深呼吸を入れて。

教室入り口へと付けられた引戸を、勢い良く。

そして一機に滑らせた。


【ガラガラガラ~ッ…バシッ…】


(俺)「ウオッシャーッおら~っおいっ…遣って遣るぜ~っうらっウラーッ…全員纏めて…着いて来いや~っ…」。


買ったばかりの制服の、その上着を脱いで。

俺はその上着を、自分の机の上に叩き付けた。

まだまだ高校生活も始まったばかりで、此所で上着を破かれても。

堪ったモンじゃない。

既にワイシャツはもう、ボロボロな訳だ。

俺が大声でそう怒鳴ると、直ぐに教室の中で10人程が。

座って居たその自分の席から、勢い良く立ち上がった。


教室内を見渡して、相手の人数を確認すると。

この地点で既に10人。

10人は居る。

先程想った通り、1クラスへ約10人。

まだ他にも居る筈だが。

ほぼ予測した通りの、その人数だった。


(俺)(ヤッパシ冴えてんな俺って…何時こんな事を…身に付けたってんだろう…???誰にも教わってねえのに…)。

そんな事を考えながらも俺には、時間が無かった。

教室の入り口へ、一番近い席のヤツからの。

その距離はもう、3mと無い。

幸い俺とその連中との間へは、机が在るが。

それを迂回して俺に着いて来るのに、差程の時間も掛からない筈だ。


まあ精々それは掛かっても、3~4秒程度だろう…???

此所でこの教室内で、もしも俺が連中達へ掴まれば。

先程のあのトイレの中で予測をした、起こり得る戦況とその展開。

そしてその状況迄をも比較した、その算段でも俺には。

圧倒的にこの教室内、この場所での勝負では。

不利って話だ。


この勢いの儘に、先ずはその場へと居た全員を。

兎に角トイレへ迄に、誘導をしなければ成らない。

全身全霊で張り上げたその大声で、俺は更に張り詰めたその声を。

再びその場で絞り上げた。


(俺)「"根性"のねえヤツは別に…来なくても良いんだぜっ…臆病者で怖ええヤツは逃げるなら…今の内だかんなっ…どうせ全員…勝てこっねえんだからよっ"…」。


俺の声はもう半端なくデカイ、そして遠く迄本当に。

良く通る。

恐らく俺の声ならあの東京ドームでも、マイクは要らないだろう。

その破壊的な迄の大声を聞いて、連中達の身体が。

強ばって行くのが良く判る。

破格的な迄に、大きな声や音等を聞くと。

人の身体は強ばり。

一端強ばったその身体と、その際の緊張感から。

精神的にとても不安定と成り。

頭は混乱し、固く成ったその身体からは。

期待した運動能力も、決して発揮は出来ない。

そんな処も昔の【中華】なら、俺はもう大将軍の。

その器な筈だ。(笑)

デヘッと。


俺のその大声に因る、挑発に乗って教室内。

俺を睨んだその連中達の顔が、もう見る見ると興奮し。

眼は吊り上がり、頬や額や耳迄もが。

もう一機に赤らんで来た。

まるで赤鬼の形相だ、作戦はもう大成功だ。

全員が一斉に此方へ、誘導をされている。

俺に向かって来ているのだ。

俺は踵を翻し、その儘一機に。

トイレへと向かった。


トイレへ入ると直ぐに俺は、つい先程に決めた。

自分のポジションへと、自らの身体を据えた。

トイレの壁に付けられた、BARのカウンター等へ置かれてる。

椅子の様な形の小便器と。

その両サイドへと在る、陶器の衝立てのその間へだ。

掌を軽く握って親指を振り、その拳を掲げ。

軽く握ったその掌を、眉間の位置へ迄に。

高く引き上げた。


パンチは打つ前に初めから、自分のその拳を。

力強く硬く握り絞めて仕舞うと。

固まった腕や手首のその固さから、初速に必要な高いスピードとその瞬発力を。

上手く発揮出来ない。

特に親指を内側へ、振り込み絞り込みながら。

その一瞬のグリップが産み出す、その握力と。

その瞬間で破壊力を倍増させる、ボクシング・スタイルのパンチへは。

この手首や腕と肩迄の柔軟性が、中でも初速を産み出したその後の。

身体全身のその脱力が、つまりは撓やかさを伴ったその柔軟さが。

そのスピードとパワー、つまりは破壊力の。

その鍵と成る。


要はもう撓やかな鞭の様に、拳や腕。

肩と腰。

そして全身の捻り込みで、スピードとその力を。

相手の急所のその1点へと向かって、絞り込み捩じり込む訳だ。


著者・龍神 武明

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