第14話

第9部 

実用性の追及 物の構造と調整 己の身体へと合わせた道具 2016年参議院フェスと ラップ・ミュージックの重鎮 鍛練の賜物 目指せ山中湖合宿  


逆に実は本当に腕の良い士(サムライ)や刀鍛冶職人程、この道具と言う物へは。

それももう徹底的な迄の、その拘りが在る。

士が選ぶ【刀】のその一つを取って見ても、先ずは自分の身体とのバランス。

手足の長さや全身から生み出されるパワー、その力量へと合わせた。

重さや長さ、そして反り具合や。

個人の持つその癖に因る、【刀】の重心位置等と。

もう細かく改善をすれば、それももう切りも無い程にだ。


柄から刃先迄の長さはもうその儘に、自らのその間合いと成り。

重さは使いこなせるその範囲で、重ければ重い程にその打撃力と。

その破壊力としてのパワー、当然その斬れ味迄をも産み出す。

現在の俺は初速と成る瞬発力と、その後の脱力との兼用。

混合されるべきそのバランスを、既に身に着けているので。

又力も強く動きへスピードが在り、手足が長いので。

弾力性豊かで折れ難く、反りの緩やかな形。

鍔元から中腹へ掛けては【直剣】で、先端。

つまりは刃先へ向かうにつれて、やや反りを深めるモノ。


又初速を重んじ脱力からのその加速で、斬り終えるので。

重心は切っ先と頭へと別れ、主にそれも。

切っ先側の比重が重い、そんな【刀】が良い。

つまりは加える遠心力が最も伝わり安い、振り子の原理を巧みに上手く利用したモノ。

形状で言えば薙刀型のモノだ。


勿論此れだけの拘りが在れば、自分へ合った名刀を手に入れるにも。

刀鍛冶とのその連帯が、重要と成る。

士(サムライ)は自らその腕前を上げて、己の名を世間へ轟かせれば。

自分の意見やその希望を刀鍛冶職人へも、伝える事が出来る様に成るだろう。


逆に言えば士の体格や力量、体重やスピードやそのバランス感覚。

重心や剣技に因って変わる【刀】の軌道や、それ等で描かれる個々のその癖を見て。

その個人差を見抜き。

与える【刀】を作り変える事が出来る刀鍛冶程、優秀な鍛冶職人とそう言え様か。


昔清掃の仕事をするその際に、新しく入って来た新人の後輩へ。

道具の大切さとその選び方を、教えた事が在る。

些か出勤時間を早目て、清掃時へ使うシャンパーとプラスチック・ブラシ。

或いは箒を選ぶ、只それだけの事だが。

シャンパーとは水で埋めた液体石鹸を着けて、モノを洗うスポンジ製の先端部が着いた、T字型バーの事だ。


たったそれだけの事なのだが、選んだその道具に因ってその日の仕事の能率。

つまりは自分自身のその出来高が、大きく変わって仕舞う。

中には箒の穂先へ付けられた稲穂が、既に抜け落ちてしまっている。

そんな物さえもが在る。

そうした箒を使って居ても、一度で済む筈のその掃き掃除で。

同じ場所を二度三度と、余計に掃かなくては成らない。


こんなに単純な話を、「弘法は筆を選ばす…」とそう言われて。

それを真に受ける日本人達は、底知れぬ程に呑気で。

そんな呑気な自分へも全く、気付けぬ儘で居るのだ。

なんとも馬鹿らしい、その限りなので在る。


俺は小学3年生の終わりに【ブルース・リー】へと憧れ、自分で始めたこの【ヌンチャク】の鍛練と。

連日に続けたその修練に因って、既にその事へと気付いても居た。

道具や器具や工具や機械へは皆各々に、その物の構造が在り。

先ずはその構造と言うモノをもう充分に理解する事こそが、道具を最大限に上手く使いこなす為の。

その必須条件で在る事。


そしてそもそもその道工や工具、或いは器具や機械へは。

例え同じ物でも、端からその善し悪しが在り。

当然良い物へは全く、一害も無く。

悪い物へは例え、百害は在ったとはしても逆に。

一利の得も無いのだと。

更にその上(うえ)下手をすれば、悪質な癖。

悪い癖を備え持つ物迄もが在る。


俺が手に入れた【ブルース・リー】オリジナル、【ジークンドウ式・ヌンチャク】の。

その二つの【棍棒】のその関節部で在った、当時の俺には未だ長い。

その【鎖】の部分を、調整をしたその【ヌンチャク】は。

もう即座にその日から俺の、その身体の一部へと。

その様相を変えた。


連日俺は学校から帰宅をすると、宿題の前に先ずは【カンフー】の各種。

脚蹴りの練習をし。

そして暗く成るとこの【ヌンチャク】を持ち出し、猛特訓。

意識が朦朧とする迄にも、只只管(ひたすら)に。

それを続けた。


家の裏で暗く成ってから【ヌンチャク】の練習を始めるのは、練習をして先ずは【ブルース・リー】程に。

上手く成り。

上達をして周囲を驚かすその為と。

同じ量の練習を知人や友人達へ、真似させないその為にだ。


嘗て【ヤクルト・スワローズ】と言うプロ野球チームは、秀才【野村】監督のその采配に因り。

1992年と1993年のその2年連続、「データ野球」でその急成長を遂げ。

セントラル・リーグでの連続優勝を成し遂げたチームだ。


しかしこの【野村】さんこと【野村】監督は、些かお喋りで在ったがその為に。

直ぐにこのデータ野球と言う、その天下の王道で在った筈のその「虎の巻」が、世界中へと広まって仕舞い。

今では既にそれも野球界のみ成らず、全世界スポーツ界の。

その対戦戦略と迄に成ってしまった程だ。


その後ヤクルト・スワローズは2021年と2022年の、再びの連続優勝迄。

30年近くものチーム優勝を逃す、そんなブランク迄をも。

作ってしまった程だ。


まあもしもあの儘、「野村」監督が黙って居たとしたら。

野球界処か全世界そのスポーツ界の、その発展迄もが遅れたので在ろうが。

どちらが選り大切で在るのか…???

個人がそれを決める事で在るのだから。

俺はそれを敢えて、どちらとも決める事はない。


只戦争で戦場と成るその場所や、自分の身体の身の安全。

或いは命の危険さえをも晒した、そんな場所では。

又は在る種のその包囲網を持って、追い込まれて仕舞ったそんな。

【絶体絶命】のその場面では。

敵と成る相手側へ、自分の修練や鍛練のその成果と姿を。

その積み重ね上げた実績と実力のその秘密を、決して見せては成らないのだ。


戦場での情報の漏洩はそれ即ち、即座にその場での。

命取りとも成り得る

そうした最悪の結果迄をも、自分自身が其処へ呼び込んで仕舞い。

招き入れ兼ねないからなのだ。


しかしそもそもが師匠から、それを伝授される筈の【カンフー】技術。

中でも「イップ・マン」からそれを、伝承をされたとは言え。

【ブルース・リー】自らが更に、その奥義を開発したと言われる【ジークンドウ】。

当時の【ブルース・リー】自身は、最も最初の日本公開映画。

「燃えよドラゴン」の当時の、その上映開始の際には。

既に香港で亡くなって居た。


死因は【覚醒剤】に因る、その薬物中毒で在るとも。

そう噂されても居るが。

1973年の7月20日、女優の【ベティ・ティン・ペイ】(丁珮) のその香港自宅で。

頭痛を訴え。

鎮痛剤(アスピリンを含むEquagesic)を飲んで、ベッドに横に成ると。

その儘昏睡状態へと陥り。

クィーン・エリザベス病院へと搬送をされたが、その儘。

帰らぬ人と成ってしまった。

彼が未だ32歳の、その真夏の出来事で在る。


俺はこの際に彼が服用をしていた、「アスピリン」と。

現在でも違法薬物として指定をされている覚醒剤の、その兼用こそが。

死因のその本質的な原因で在るとさえ、そう想っても居る。

或いはそれ等に更に、他の混入物。

混ぜ物をされて。

つまりは更にそこへ、一服盛られたかの…???

その何れかで在る。


「アスピリン」へ憑いては既にもう、様々なその問題点が指摘をされてもいる。

血液をサラサラにする薬物としての効果が、高い薬らしいが。

逆に怪我をした際に、血が止まらなく成って仕舞うと言った。

そんな難点迄もが、在るのだと言う事と。


更に胃腸障害、嘔吐、蕁麻疹、発疹。

浮腫、目眩、頭痛、興奮。

過呼吸、倦怠感、貧血等々。

数え上げればもう、それも切りが無い程にさえ在る。

在り過ぎるとさえ、そう想える程にだ。


内蔵系統内での不要物の摘出や縫合、臓器を切り離すその場合や。

血管へ傷を着け兼ねない、難題な外科手術を行うその場合にも。

この「アスピリン」を服用している患者の場合は特に、その手術へ。

繊細な迄のその注意を、払わなければ成らないのだ。


兎も角俺が彼を、人生初の武術・武道。

その師匠として崇めたその際には。

既にその師匠は亡く成って居たと、言う話な訳だ。

師匠と言う者さえをも持たない、未だ小学生の分際で。

見様見真似に始めた、その【ジークンドウ】と。

その奥義。

【ヌンチャク】と言う、中国式武具の練習と鍛練。


俺はもう先ず兎も角、テレビでの【ブルース・リー】登場。

その放映の際には。

画面の側へ迄と近付き、その場へ貼り付いてそれももう。

喰い入るかの様に。

彼の実技へ自分のその眼を、もう皿の様に凝らしても居た。


何も知らない無知識の者が、【ヌンチャク】を上達するには先ず。

最初の難関が在る。

身体の中心軸から左右対称に、この武具を振り回すその際に。

逆回しをして仕舞う事だ。


それでも先ずは何よりも、その構えから。

先ず両足を肩幅と、その同じ広さで開き。

軽く気持ちその程度に膝を曲げ、腰と膝を落とす。

全身のその力を抜くのだ。

遠心力とその重力に因って変わる、【ヌンチャク】のその動きと。

その位置を。

全身の感覚と神経で感じ取る、その為にだ。


俺の場合先ず利き腕、右手で【ヌンチャク】を持ち。

持ち手と成ったその利き腕を、僧帽筋の真上に迄引き上げる。

この時、堕らりと下がったヌンチャクの。

その受け取り側が、同じ利き腕の真下。

臍の真横と成る脇腹の位置へと下がれば、最も理想的だ。

この姿勢と体勢を、自分の身体へもう。

徹底的に染み込ませる。

開始の、振り回し始めのその姿勢と。

逆側の手で、受け取る際のその姿勢と体勢が。

その左右が入れ替わるだけで、全く同じで在るからだ。


不思議なモノで人間の肘は、それも大概の場合。

自分の臍と同じ、その高さへと在る筈なのだ。

【ヌンチャク】を持つ利き手とは反対に、受け手と成る掌を。

脇を開かず直角なその角度で、自分の身体側へと向けて。

背中側へ向けた掌を、脇腹のその位置へと。

運んだその場合。

丁度僧帽筋の上から振り下ろした【ヌンチャク】の、その腹の部分を。

掌でスムーズに受け取れる筈だ。


この姿勢から【ヌンチャク】を振り回す、その動作を始める。

この位置から次のアクションを起こせば、最も理想的に。

無駄無くスムーズな形で、【ヌンチャク】が振れる事だろう。

この最初の姿勢と、その態勢の儘に。

同じ反対側の、その姿勢へと向かって。

その左右を入れ換える。

左右を入れ変える為にこの武具を、美しくスムーズに回すのには。

自分の前方へ向けて、上から下へ振り回したのでは。

上手く受け取れないばかりか。

下手をすれば自分の後頭部を、叩いて仕舞うのだ。


そう、逆なのだ。

始め俺はそれが解らずに、もう何度も何度も。

俺も自分のその後頭部を叩いていた。

(何かが違う…???在れだけスムーズにヌンチャクを振り回せるブルース・リーとは…何かが…何かが全く俺とは違っている…俺が上手いとか下手だとか…器用だとか不器用だとかなんかの…そんな話しでは無い…最初からもうその何かが…全く違っている…???)。

逆回しをして居た俺には、たったそれだけの事が。

始めは解らなかったのだ。


その後の俺はとても運良く、様々なその当時のテレビの番組が。

この【ブルース・リー】の映画を、まあ当然部分的にでは在ったのだが。

逐一紹介する様に成った事で。

新聞のテレビ覧をチェックして、彼の映画紹介を確認すると。

俺はその時間を待って、テレビへと囓り着いて居た。


考えて見ると、昔新聞や雑誌へ掲載されていた。

テレビ欄も。

俺はこの頃から、観る様に成った筈だと。

今ではそう思える程だ。

まるで皿の様に開いた、大きなこの眼で。

その様子を一部始終、確認しながらも。

その時俺は大声を上げた。

(俺)「逆だっ…逆だったんだっ…全く真逆に回して居たんだっ…だからもう何度も何度も…瘤が出来る位に…頭を打った訳だ…コレは解らなかった…」。


直ぐに【ヌンチャク】を手に取り、真逆にそれを回すと。

一振り目からもう「パシリ」と、回した【ヌンチャク】が綺麗に。

自分の掌へと納まる。

驚いたのは俺の方だ、こんなに簡単にそしてスムーズに。

何のその痛みも無く、【ヌンチャク】が回せるなんてと。

そう。

この日から俺の【ヌンチャク】修行はもう、それもう大噴射で。

ジェット・エンジンの様に、その出力を最大限に迄に。

発揮し始めたのだ。


この小学校4年生の、その終わりから。

6年生の、その夏休み迄の間に。

そして中学の、それも一年生の終わり迄。

暗く成り人影も疎らに成ると、俺は【ヌンチャク】の鍛練。

孤独なその練習を続けた。


そうして積み重ねた練習のその成果を、後に俺が。

水泳を教えた後輩達へ、披露をする日が訪れたのだ。

小学校のスポーツ少年団、スイミング・クラブの。

夏合宿のその際にで在る。


スポーツ少年団の夏合宿、その出発の2週間前から。

トータル3年余りを掛けて、磨き込んで来た。

【ヌンチャク】のその腕前に。

仕上げを掛ける為に俺は、最後の追い込みへと入った。

既に俺がこの【ヌンチャク】始めてから、3年以上もと言うその月日が。

流れても居た。

いやまあもう子供ながらに本当に、飽きもせず。

又根気良く実に良く、続けたモノだ。

それ程迄に彼の、【ブルース・リー】のその実技。

【ジークンドウ式・ヌンチャク】は。

俺のその眼と、その頭の中へ。

絶大な迄の、その存在感を持って。

その印象を、強烈な迄に残したのだろう。


このスポーツ少年団の夏合宿へと向けて、俺は自分の【ヌンチャク】の。

その練習シフト迄をも、全て切り替えた程だ。

学校から帰ると先ずは、宿題を終わらせ。

6時から8時迄は、先ずテレビを視る。

まあ好きな映画の在る時は、それを視終えてからだが。

主には8時から11時迄の、何とその3時間。

その3時間に渡り。

徹底的に【ヌンチャク】のその鍛練と練習に、励んだのだ。


しかも暗闇へと紛れて、人も全く通る事の無い。

塞がれた狭い、水路上のその路地で。

未だ小学校の6年生がだ、暗いなっ。(笑)

しかしそれ程迄に俺は、この【ブルース・リー】の【カンフー】その奥義。

オリジナル【ジークンドウ】【ヌンチャク】の、その技を。

愛しても居たのだった。


この頃俺の実家、その周囲へは。

夜8時を過ぎると、狭いその路地裏から。

「ヒュンヒュン…」と風を斬って、振り回される【ヌンチャク】のその音だけが。

響き渡っても居た…。


目指す舞台は富士山の梺「山中湖」、「フィールド・アスレチック・キャンプ場ホテル」だ。


著者・龍神 武明

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