待っている先
赤城ハル
第1話
店の戸が開き、俺は伺う。
「おっ、丸山だ。やっと来た。こっち」
俺は手招きする。
丸山は少しむくれた顔で椅子に座る。そしてやってきた店員に、「とりあえず生」と注文する。
「遅かったな。無理だったのか?」
「無理だった」
そう言って、丸山は皿の上の焼き鳥を断りなく一本取って食べる。
すぐに一本食べ終え、
「とりあえなかった。駄目だな。無理だよ」
丸山は自嘲気味に答える。
そこで生ビールのジョッキが届いた。
そして丸山は店員に焼き鳥と餃子を注文した。
実は夕方に発注していた商品の一部に問題が発覚。そして丸山はすぐに原因となった下請けに連絡を取るも相手とは繋がらなかった。その時は俺もまだいたから知っているが、丸山は受話器を片手で持ちつつ、机を指で叩いていた。かなりイラついていたのが、誰の目にも明らかだった。
「会社そのものに繋がらないのがおかしいんだよ。絶対こちらからの電話には取るなって社員全員に言ってたんだよ」
そして担当責任者のスマホに何度もかけて、やっと連絡がついたらしい。
「夜の8時だぞ。繋がったの」
そう言ったあと、丸山は一気に生ビールを喉に流す。
半分ほど飲んで、次に焼き鳥を食べる。
「さっきから食ってるそれ、俺のだから」
「注文したから、そっち食ってくれ」
丸山はもぐもぐと焼き鳥を食べる。
「で、どうなった?」
「……問題解決で再発注」
「問題は解決したのか?」
「そう言ったろ」
丸山はぶっきらぼうに返す。
「知ってたんだよ。あいつら。だから、すぐに解決したし、すぐに再発注に取り掛かったし」
そして店員がやって来て、焼き鳥と餃子を置いた。
「問題は取引先だよ。とりあってくれなかった。あれはガチギレしてるな」
「明日、すぐに謝罪に向かわないとな」
「俺のせいじゃないのにな……」
丸山はつらい顔をして溜め息を吐く。
「愚痴っても仕方ないさ。ほら、食べろよ」
「嫌なことが起こると分かっててもそれを回避出来ないのは悲しいな」
「飲んで忘れろ」
「忘れたいけど、酒臭かったら先方も怒るだろ。それに二日酔いに罵声はきつい」
「まあまあ、とりあえず飲め。そして食え」
待っている先 赤城ハル @akagi-haru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます