急転
その日も朝は早かった。
傷だらけの体を引きずって、あぜ道を進む。
あばら家のそばで見知らぬ声が聞こえ、安崎は足を止めた。
この村は閉鎖的だ。村にはよそ者もいるようだが、行動の自由をはく奪されている安崎は、詳しく知らない。
「ヴぉい。」
だみ声と共に張り手が飛んできた。
「おめぇさぼりけ?いい身分だなぁ。おい?」
あいかわらずのあばた顔が往復の張り手をかます直前に、見知らぬ声が割り込んできた。
「そいつ、ナニモンだ?」
おまえこそ何者だ。
「おめえこそナニモンだ。」
お、気が合うじゃねえかあばた面。
しかしその問いかけは、見知らぬ男ではなく、隣にいた木こりが答えた。
「こいつは隣村のもんだ。叔父が村のはずれで殺されちまったんだってよ。」
・・・は?
「なんでも盗賊でも住み着いたんじゃねえかって話だ。」
「盗賊ぅ?」
村人たちの会話をよそに、おれの心臓はうるさいぐらいに拍動していた。隣村 村のはずれで殺された叔父 ・・・まずい。
「しっかし、盗賊な ぁ」
あばた面の女の後頭部を右手に抱えた桶で強打し、間髪入れずあっけにとられる大工に襲い掛かる。
会話の続きが手に取るようだ。盗賊騒ぎのなかで、ちょうど最近現れた出自不明の男、疑うにきまってる。現に俺が犯人だ。そして、疑われれば、十中八九危険な目にあわされるだろう。そう考えた時には体が動いていた。
「痛っ」
大工の男にとっさにさけられ、損傷は少ない。しまったと思う間もなく、っとなり村の男の右こぶしが俺を貫いた。
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