閑話 山中村

 佐柄領に赴任する直前、安崎は山中村に立ち寄っていた。山中村は佐柄領と南郷領の境にある。


 安崎が拠点とする予定の佐柄領本村は佐柄領のど真ん中にあるので山中村とは行き来しづらいのである。


 また、山中村そのものが通いづらい場所にあるので安崎は定期的な年貢の徴収を諦めていた。


 いちいち山を越えて年貢を納めさせるのは採算が合わねぇのである。だが、山中村は豊かな村だ。せっかく支配しているので何かしら利益を得たい。直感こそ至高とする安崎にしては珍しく、様々な思案の末、賦役を課すことにした。


 賦役といっても別に堤を作らせたり山に路を引かせようということではない。山中村の様々な特性と今後の戦略について思案した結果、軍用犬を育てさせることにした。


 軍用犬である。安崎はミリオタでも軍人でもないのでイメージはふわっとしており、「戦う犬」が欲しいなあと思っていた。


 山中村には猟犬を使う猟師もいる。安崎は実に適当に、なんかうまいことやるだろうと考えていた。


 獣を追い立てるのと人を襲うのでは育て方が違そうだが、人に従う犬をつくることはできるだろうからなんとかなるかもしれない。


 猟師も実に適当に承諾した。年貢がなくなるのである。それぐらいならやってもいいかなという気分だった。


 こうして、安崎軍軍用犬養育計画が始動した。


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山中村は鳥取県東山にある設定です。


明日も投稿予定。


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