現状整理
「お代官様、お納めくだされ。」
俺の前には小麦やら稗、粟などの収穫物がどっさり積まれていた。
この世界にやってきてから早半年、無一文の流離いだった俺もいまや盗賊団の首領である。ここでいちど現状を整理したいと思う。
支配地域 山中村
拠点 麓村(南郷領)
手勢 25名(古参3・麓村20・山中村2)
山中村は納税を受け入れた。徴収一回目は襲撃直後。どうやら俺は初夏にこの地にやってきたらしい。冬じゃなくて本当に良かった。一回目の納税を受けて、俺は拠点を麓村に移した。山中村は盗賊稼業をするには不便すぎるので却下。その際山中村からも仲間を募ったのだが二名しか集まらなかった。豊かな村は盗賊になりたいやつが少ないらしい。
麓村は元々南郷家と佐柄家に二重支配されていたわけだが、南郷家に従属することに決定した。村の寄り合いで決まったのだが、村長から「佐柄家の役人追い払って。」と依頼されたのでやってきた役人を襲っておいた。普通の盗賊をやるのはこれが初めてのことである。お姫様さらったり、村を支配したりが先とは、不思議なこともあるもんである。
で、その後訪れた南郷家に丁重に挨拶し、支配下に入りたい旨を伝えた。ちょうど両家の争いが再燃していたらしく快諾された。で、麓村も兵を出せ、という話になったので、暇していた我々にお鉢が回ってきた次第である。
そういうわけで今の立場は南郷領麓村の出向兵のまとめ役。盗賊より幾分まし。
この半年、俺は戦場を行き来しつつ現状把握に努めた。この国の地図を探したのだが、南郷家も持っていないらしい。都にはあるやもしれぬとのこと。都はここから騎馬で1年ほどの場所にあるそうだ。遠い。
さて、突然だが戦国時代の戦をイメージしてほしい。長槍部隊の激突?鉄砲の撃ち合い?そんなものはない。そもそもの在り方が違う。農民をかき集めて敵をすりつぶすようなことは行われない。ここの戦は、話し合いの延長なのだ。「隣村のやつら魚取りすぎじゃね?」「俺たちもあの川使うのにな、ちょっと言ってくるわ。」「だめだった。」「じゃ、戦するか。」こんなもんである。なので無暗に殺すようなこともせず、死者も多くて二人程度。敵が逃げたら「いやあ勝ったぜ。」で終わり。そういうわけでわれらは一人も欠けることなく半年を生き抜いたのだった。めでたしめでたし。
これで締められればよかったのだが最近雲行きが怪しい。佐柄家が周辺領主に南郷家の非道を訴えているらしく、このままでは南郷家は孤立しかねない。どうなることやら。
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