第8話

街灯の周囲に深い濃霧が

かかっていく

エントランスの部分だけ

時間が巻き戻っていくようだ


ザワザワ…ザワザワ…

と人の気配が強くなる


シャキン…シャキン…

と金属がこすれ合う音がする

そして…薄ぼんやりと人影が

濃霧の中から現れる


大きな切株のような台の前に

一人の女性が立った


膝をつけ!

二人の大男が

後ろ手を縛られた女性を

羽交い絞めにして橋の石畳みに座らせた


台の上に上半身を乗せ

ほっそりとした長い首を

台の一番端っこに出し

肩を押さえつける


貴女はイギリスの王妃…イギリスの母でありながら

大罪を犯した…よって、神の命により処する


司祭をキッと睨みつける女性…彼女はアンブーリン

今、まさに処刑されようとしている


ウッ…なんで、僕を睨むんだ

彼女の目に怖気づいてしまった


ジョウ,こっちに…

ビリーが僕を引き寄せて言った

さっき立っていた場所は…司祭が立ったところ

アンブーリンは、君を睨みつけたわけではないよ


ギシギシ…くッ…

白銀の閃光が上から下に走る


カキーン…ゴロゴロ

白銀の閃光が石畳みの中に吸い込まれ

石畳みに赤い絨毯が現れる

台の前には大きな斧が赤く染まっていた

台の上の体はピクピクと痙攣をしている


……私の首は何処

と探しているようだった


ゴロゴロ…ゴロン

首が僕の足元に転がる

ヒャ…

僕は声にならない声を出し…

ほろ酔い気分がすっ飛んでしまった

彼女の目とかち合って…体が硬直してしまう


へっ? なんで…笑うの?

ビリー…帰ろう!

僕はビリーを引っ張って、帰宅しょうとする


OK…

ジョウ、近くの教会に寄ってから

送ろう…今日は強烈だったかな…




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