第2話 孤立

新学期。

今日から2学期だ。


そろそろ進路を決めないといけない。

一応滑り止めの私立と専願の公立両方決めてるけど、先生が許してくれるかがちょっと不安。

学力的には問題ないけど、倍率が高かったら落ちるかもしれないしね。


「ねえ、進路決めた?」


「私は宮津北かなー」


「え、同じ!」


「一緒に受かろうね!!」


宮津北、か。


ここ、宮津市には5つの公立高校がある。

1番賢いのが市立宮津高校の通称市宮いちみや

2番目が私が志望している宮津東の通称東。

3番目が宮津西高校の通称西。

4番目が今聞こえた宮津北高校。

そして最後が宮津南。

……ややこしい名前だよね、どれも。


私が通うこの中学、宮津中学は賢い人が多くて、みんな市宮か東に行く。

滑り止めで私立は紅丘学院か、隣町の城川学園。


私立なんてお金高いから行く気失せる。

親に申し訳ないもん。

特に城川学園なんかお金持ちたちが通うところだし、カースト制度とかやばそう。

紅丘学院はまだましだけど、お金が高いことに変わりはない。

だから絶対公立に行きたい。


「てかさ、昨日のStellaの動画見た?」


「見たよ!りりかちゃん可愛かったよね〜」


「りりかもだけど、うちはまゆちゃん良かったなー」


「わかる!」


昨日のStellaの動画。

もちろん観た。


学生ドラマでいじめっ子に復讐した、という内容のドラマ。

主人公はりりかちゃん、そして協力してくれるのがまゆちゃん。


まゆちゃんこと、天野まゆちゃんはりりかちゃんと同期のモデルで、儚い雰囲気の清楚系モデル。

しっかりしてるけど、ふんわりしててものすごく人気なモデルなんだよ。


こんな感じでクラスの話題はたいてStella。

加わりたいって思ったことはない。

1人でも良い、というか1人でいたいから。

人と話すのが苦手で訳ではないけど、ただ面倒だって思ってしまう。


何でそんなこと言われないといけないんだろう、何で人のこと考えないんだろう、何でそんなしょうもないことでふざけて、笑ってるんだろうって見てるだけで面倒だなって思う。

クラスで何気なく話せる人は何人かいるけど友達ってわけじゃない。



ぼっちを貫いているんだ。



一軍女子なんて関わりたくない。

陰口しか言えないし、自分のことしか考えないあんなやつらと話したくない。


人の陰口言って何が楽しいんだろう。

あの子可愛くないとか、ブスだとか、いい子ぶっててキモい、とか。

あいつ顔きもいよね、恋愛対象じゃない、勘違いしてて怖い。


思い出すだけで嫌になってきた。

早く卒業して、バラバラになりたい。


「そういえばあの子ずっとぼっちだよね」


「あー橋立さんだっけ?」


「顔は可愛いのにね」


「え、性格どんなの?」


「そっけなかったんだよね。目を見て話してくれないし」


「何でだろ。まあ別に関係ないでしょうちらに」


「「「そうだねー」」」


はああ、聞こえてるんだっての。

ほんと、クラスって居心地悪い。


けど、私にはりりかがいるもん。

りりかを拝めるだけで十分。

友達なんていらない。



朝休み終了のチャイムが鳴り、各座席につく。

それでも近くの人とおしゃべりするクラスメートはいる。

静かになってくれないかなぁ。


少しして、担任が来た。

うちクラスの担任は男の数学の先生。

テンパで眼鏡をかけていて変わった性格をしている。

いや、変わって性格どころか変人。


あれ、後ろに知らない生徒がいる。


背は低めで華奢。

肩までの短い黒髪に超綺麗なまっすぐな前髪。

可愛い顔立ちにぱっちりした目。


クラスメートたちが何だか騒がしい。

心臓がドクン、と跳ねる。


絶対見たこと、ある。

いや、知ってる顔だ、絶対。

いやいやそれどころじゃない。



……あ、あああ、あの子ってもしかして……!?

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