はなす時にはご注意を!

CHOPI

はなす時にはご注意を!

「はーい!今から注意事項を話します。先生の話をちゃんと聞いてくださーい!」

 今日は待ちに待った遠足の日。クラスのみんなと、それから隣のクラスの子たち、1年生みんなで電車を乗り継いでやってきたのは、いつもの活動範囲から遠く離れたところにある大きい公園。でも、『公園』って名前だけど、いつも遊んでいるような近所の公園とは全然違う。動物園もあって、アスレチックもある、めちゃめちゃ大きい公園だ。


「はーい、静かにー!そこ、話さないでー!!」

 先生が大きな声で注意する。『どんどん時間なくなるよー!!』の声に、みんな慌ててお互いに『しーっ!』と目配せをしあう。そうしてようやく静かになって、先生が話を始めた。

「最初に動物園を見て回ります。中に入ったら2人1組で、横2列に並んだまま順番に静かに見ます。2人1組はプールの時にやったバディを組みます。そしたら今から背の順2列に並んでー。入場前に人数確認しまーす!」


 そう言われて今まで背の順で1列に並んでいたのを前の子から順番に左右に分かれて2列に並んでいく。隣の子と手をつないで、先生が『バディ!』と言う。

「「いち!」」

「「に!」」

「「さん!」」

 ――そうして、最後の子たちが「「じゅういち!」」と言って声が途切れた。

「22人、全員います!」

 一番背の大きい子がそう言うと(プールの時にそういうルールにしようって、先生とクラスのみんなで決めた)、先生が『はい、オッケー』と答えた。

「これからみんなで動物園に入ります。バディ組んでる子の手、離さないでねー」


 動物園の中に入って、みんなで順番に動物を見る。パンダとかゾウとかサイ、サルにカバでしょ、それからライオン、トラ、ヒョウ。薄暗い小さな建物の中ではコウモリとかヘビ、別の建物ではでっかいリクガメ。また外に出たと思ったら、クジャクが羽を広げてて、その横にはピンク色のフラミンゴが片足で立ってた。


「はーい、聞いてー。この後お弁当食べたら自由時間です。15時にはここに戻ってきてくださいね」

 お弁当を食べ終わったら、アスレチックで自由に遊べる時間になる。ここはアスレチックも大きくて色々なのがあるから、クラスのみんなで楽しみにしていた。

 みんなでお弁当を食べて、それから食べ終わった順に片づけをして荷物をまとめて置いていく。クラスの半分くらいがアスレチックに吸い込まれていって、その頃になってようやく自分もお弁当を食べきった。荷物をまとめて置きに行くと、隣のクラスの先生が担任の先生に話しかけて、だけどアスレチックに早く行きたかったから気にしないでその場を離れた。



「先生、お疲れ様です。みんなに注意事項は話しました?」

「はい。15時にはここに戻るよう、話しました。遊びに行く前にここに荷物をまとめて置くのも話したので、みんなここに荷物をまとめて置いて行っています。……本当は子どもたちの事、放さないでバディ組んだまま他のところを見て回る方が安心ですよね……」

「ハハッ、確かに。目が届く範囲で何とかなりますからね。……そういえば、水辺のアスレチックは止めておいてっていうのも言いました?」

「……あ」

「……ま、まさか……」



 ――先生が慌てて『水辺のアスレチックは止めてー!』と言いに来たのは、数人の男の子たちが水に落ちた後だった。

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