第3回 《ゲスト回》威療士って何ぞや? Part. III

「やあ、みんな! 元気か! |筋肉こそ力マッスル・イズ・パワーだぁあ! 今日は、ルヴリエイト・ママに代わって、この俺、チーム〈チョコレート・ライトニング〉リーダー、マロカ・セオークがお届けするぞ。しっかり肉を食えよ? もちろん、野菜もフルーツもだぞ!」


「……ねぇ、エリーちゃん。ロカ、ちょっとわざとらしいと思わない?」


「うん、あとなんか、うさんくさい」


「聞こえてるぞー、二人とも。台本? のとおりにやったんだが……」


「あら、救命活動じゃあ、筋書き通りにいかないことなんて、茶飯事じゃないの」


「うんうん」


「比較対象が納得いかん気がせんでもないんだが……。はあ。で、俺はどうすればいいんだ? もうトレーニングに行ってもいいか? 地味に恥ずかしいんだが、これ。の大勢が見てるんだろ」


「え、ロカ、“壁”わかるんだ」


「わからん。が、そういうもんがあっても不思議じゃないとは思うがな」


「さすがは、“戦錠”マロカ・セオークね。イマジネーション力もバッチリじゃないの。じゃあ、せっかくの初ゲスト回なんだし、たっぷり話を聞かせてね」


「話すのは構わんが、おまえさんたち、これまで何回かしゃべってるんだろう? 俺が言うことなんぞ、ナイダロウ」


「それがね、説明になっていない気がしててね。だれかさんは、前回、キレて出てったし?」


「そうだっけ?」


「そうですよ! もぅ……。じゃあ、さっきも話に出たことだし、今日は、現役威療士のマロカに、救命活動のこと、解説してもらおうかしらね」


「わかった、お安い御用だ」


「ノリノリじゃん、ロカ」


「むかし、学校の先生になりたかったんだものねー?」


「……進めていいかー。だいぶ尺とってるぞー」


「はいはい、どうぞ、マロカ先生」


「おう。……てことで、救命活動だが、要は人命救助のことだ。道端に人が倒れてたら、助けるだろう? それが救命活動だ」


「短っ」


「本質を一言で表せば、そうなるからな。専門用語を並べ立てたって、訳わからんだろう?」


「確かにね。でも、もう少し、具体的な解説がほしいかも」


「そうだな。俺たち威療士は、涙幽者スペクターの相手をするのが仕事だと思われてるが、それだけじゃない。負傷者の応急処置もするし、搬送もする」


「“腹ぺこ《レベネス》”かどうか関係ないし」


「そうだ。ところで補足すると、今、リエリーが使った単語は、正式名称でもなければ、専門用語でもない。言うなりゃ、“リエリー語”だな。元は、涙幽者を蔑む単語『飢えた黒Ravenous Black』から来ている。よって褒められた使い方じゃないんだが、リエリーは敢えてポジティブに使ってる。いわゆる、叛逆児ってやつだな!」


「ちょっとロカ。そういうの、言わない」


「ははっ、すまんすまん。ともかくだ。俺たちは、失われようとしている命を救うのが仕事だ。諸君も、困っている相手を見かけたら手を差し伸べてやってほしい。俺たちは、そうやって支え合って生きてるからな」


「「おお」」


「ん? 何だ、その歓声は」


「なんか先生ぽい」


「ね、でしょ?」


「光栄だが、これくらい、威療士なら誰だって言えると思うぞ。以上!」


「きれいにまとまったわね。次からはロカにお願いしようかしら」


「むさ苦しい野郎より、べっぴんAIのほうが需要あるぞー」


「うっわ。真顔で言ったし」


「いやーん、もぅ。搭載してない顔が真っ赤になっちゃうじゃないの! じゃ、今回はここまで!」


「――あ、そうそう、涙幽者を見かけたら通報したほうがいいから。手を差し伸べたら、たぶん、怪我するから」

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