第四話 終焉

 魔人『エルミナ』が『シエル』の方向を向くと、会場の目も『シエル』の方向に向く。

シエルは依然として足を庇うように立っている。


「っと言ってももう出来そうにないな。」


「大丈夫です。まだ、やれます。」

 

 シエルはもう戦闘を出来る状況ではない。


 彼女の状況を見て『エルミナ』は僕の方向を見る。


「条件をのんでくれれば、私はこの勝負を下りよう。」


 彼女の提案に会場が驚く。交渉まで仕掛けてくるとは、正直皆が魔人を見くびっていた。


「何が条件だ。条件によっては認めよう。」


 僕は彼女の言葉に答える。これ以上、殺しをやられては困る。それに『シエル』があんな風に殺されるのは屈辱だ。


「条件は一つ、魔法学校の設立を認めて欲しい。」


 もっと粗悪で強欲な条件の提示をしてくるかと思っていたが、意外な答えきた。


「そこで何をするつもりだ。」


僕は彼女に続けて問う。


「魔法学校で新たな魔法使いを生み出す。そして、彼らを育てて、新たな魔法使いの世界を作る。」


 聞き慣れない文言が続き、他の者は置いてきぼりにされている。


「分かった、聞き入れよう。これで交渉は終了だな。」


 こうして花嫁争奪戦は終わりを迎えた。


次期国王は玉座を立ち上がる。その時、母が彼につぶやく。 


「あなたは賢い判断をしましたね。これ以上、魔人の子が好き勝手やったとしても彼女が国王の妻となるのを認める者は少ないでしょう。そのことを考慮すると彼女の提案に乗るのは正しい。」


「この選択しかなかったのですよ。一択を選ぶなら誰でもできる。」


彼は母に褒められたことで調子づいて言う。


「そうですね。あなたは最初から花嫁を決めていたようでしたからね。シルネさんのためにはこの選択肢がないですものね。」


彼の頭の中は母にはすり抜けのようである。

彼は、お母様には勝てません、とつぶやくと席を立ち、後ろへと降りていった。





それから、一年が経ち、魔法学校の建設が開始。建設は急ピッチで進められ2年後には完全に建設を完了した。


彼女の前には白色を基調とした壁で塗られた大きな城の形をした魔法学校があった。

魔法学校の名は彼女の名を取り、エルミナ魔法学校と名付けた。


「やっと私の魔法学校が始まるな。」


『エルミナ』は新築の魔法学校を見てにやりとした表情で呟く。





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