第7話 僕らの関係って……
結局、遅刻ギリギリで教室に入った。
「おはよう、陽色〜。今日は寝坊か?」
「おはよう朝日。いや、寝すぎたのと、準備に時間がかかってしまってな……」
「どうせ、昨日も明け方までス〇ブラしてたんだろ?」
「ハハハ、ナワケネェダロ!!」
軽くツッコミを入れながら、クラスの友人と話した。
「というか、お前のお隣さんは、まだ来てないんじゃないのか?」
「そうだね……」
そんな会話をしていると、教室の後方ドアが開き小春が少し前髪で顔を隠した状態で教室に入ってきた。
「あっ……、そこ、私の席……」
「あ、ごめんね餅月さん。今退くから」
僕は朝日を席から立たせて、会話を続ける。
小春は、自分の席の横についているフックにカバンを掛け、そのまま机に突っ伏した。
寝るの早っ!?
本当に寝ているのか、寝たフリをキメ込んでるのかは分からないが、僕とは反対側、つまり窓側を向いて寝ている。
「なあ、本当にすぐ寝るんだな、眠り姫」
「やめとけ、本人起きてるかもしれないだろ」
「まあ、起きてても知らないけどな。しかし、この子も色んな噂が立ちまくってるよな」
「噂って?」
「本当に何も知らないんだな。〇助交際とか、頼めばヤらせてくれる〜とか……」
「何その中学生的思考……、それ言ってる奴頭悪いだろ」
「それは言い過ぎかもね、でも流石辛辣を具現化した陽色だな」
「それ褒めてんのか?」
「うん、貶してる」
「ブチノメスゾ」
「ごめんて」
そのまま朝日の横腹を結構な威力でつついた。
「痛い、痛いからやめてってww」
「うっせぇ、このドM残念イケメン!!オラッ!!」
そう、朝日はイケメンだが、残念なほどのドMであり、二次元のキャラに踏まれることを夢にしているほどの変態だ。
「ドMは否定しないけど、残念イケメンは否定させてもらうよ」
「うわぉっ!?いきなり真顔になるなよ、気持ち悪いな〜!!」
「気持ち悪いは言い過ぎだろ」
「ごめんて」
"キーンコーンカーンコーン"
「おーい、席に着けー。ホームルーム始めるぞー」
担任が気怠そうに部屋に入って来た。
「ほら、早く席に行けよ朝日……」
僕は朝日に早く座るように促した。
「いや、まだ座る訳にはいけない。なぜなら僕は、まだ君に僕が残念ですまないほどの残念さを持っていることを証明できて……」
「せんでええわッ!!」
「イデッ!?」
ノーモーションから朝日に向かって担任の投げたチョークは、見事な程のヘッドショットだった。
「沢木先生、痛いじゃないですか〜」
「あのな〜、お前は面白いと思ってやってるだろうけど、去年一年で大分分かってんだよ。さっさと座れ、このポンコツイケメンがっ!!」
「は〜い……」
朝日は大人しく自分の席に座った。
「そんじゃホームルーム始めるぞー。今日の連絡事項は、紙に記載してるから……」
話を聞いていると、隣からトントンっとつつかれた。
つつかれた方向を見ると、前髪の隙間から目を覗かせながらお隣さんがこちらに向かい一言。
「さっきの噂、どっちだと思う?」
僕はふとさっきの話を思い出した。
そして、脳が沸騰するほど暑くなって、絞り出した言葉は、
「知るかっ……」
と言ってそっぽを向いた。
「……というわけだ、おーい秋月。お前は今日の放課後生徒指導室な」
「はっ!?なんで!!」
「なんでもへったくれもあるか、お前だけ個人面談終わってないの!!」
「あ、ソンナヤツアタネ……」
「お前、忘れてたな。シバくぞ」
「ゴメ、ゴメンナサイ……」
「は、はは。今日の面談が楽しみだな」
担任は不気味な笑顔を浮かべながら指をパキパキと鳴らしていた。
僕、死んだかもしれん……。
結局、その日の授業は面談と朝の小春さんが発した言葉で悶々としたまま、放課後になってしまった。
「はあ、憂鬱だ……」
「あのな〜、人の目の前でそういうこと言わない方がいいぞ、秋月」
「なんで教師と一対一で面談しないといけないんですか、マジで本当にだるいんだけど……」
「先生意外とハートはガラスだから傷付くぞ」
「防弾タイプの強化ガラスだろ」
「おい、聞こえてるからな。お前の夏休みの課題だけ全部問題下ネタに入れ替えてやる……」
「教師がやることじゃねぇよ!!」
「まあ、ここまでは枕だ。本題に入るぞ〜」
「そうですよね……、まあそんなこったろうと思ってたけど!!」
僕は姿勢を正した。
「で、お前。恋してる、いや、正確には玉砕した後だろ」
ギクッ!!
「今、ギクッとなったな。馬鹿が、反応わかりやすすぎるんだよ」
「べべべべ別に……、どどどどど動揺なんて一切してませんが?」
「強がんなや。あ〜、でもお前彼女いるだろ。尽くしてくれるタイプの」
何でわかんのこの人……。
「『人間じゃねぇ!!』なるほど、やっぱり1回〆ておくか……」
「慈悲くれよ、クソクズエスパー!!」
「先生はどうした?」
「クソクズエスパー先生、この愚かな私めにご慈悲を〜」
「やっぱり〆ないとダメかもな……」
「マジで謝るんで、胸倉を掴むのはやめていただけないですか?」
なんでこういう時のこの人は顔が笑顔なんだ……
「大丈夫だって、殴るときはちゃんと服の下であざが見えないようにするって」
「本当にやめろください‼」
「せめて敬語にしろ‼」
先生は、僕の額にデコピンをぶち込んだ。
「痛っ!!!!」
僕は額を軽く撫でる。
少しミミズ腫れになっているが、ちゃんと前髪で見えない位置だ。
「んで、何悩んでんだよ」
「一体なんのこ……」
「お前、なんかあったろ。女関係で」
「まあ、見透かされてるんなら、仕方ないっすよね……、正直に話します」
僕は、そこから少し長くなったがこの週末あったことを少し誤魔化しながら、話した。
「なるほどな……、羨ましいからとりあえず爆発させるか」
「それはエグいて!!」
思わずツッコんでしまった……。
「冗談だよ、冗談」
「アンタの言葉は本気に聞こえるから怖いんだよ」
「まあ、そんな些細なことは気にするな。でも、お前の事はまだ俺にも分からない部分が多い、実際、心は読めても、内面部分は実際分からないことの方が多いし……」
先生はコーヒーをすする。
「だが、お前の今回の行動は甘えだ。人の無条件で与えてくれる愛情は高く付くぞ。貰える時に貰っとけ」
「でも……」
「だからこそだ、お前にどんな過去があるかなんて知らないし、知る気もない。これはお前の人生だ、お前が進まないと始まらないからな。精々もがいてみせろ、今時の若者よ」
ほら早く帰れと言わんばかりに手をシッシッとされた。
呼び出したのはアンタなのに……。
そんな理不尽を噛み締めながら、生徒指導室から出た。
「もうやる事ないし、帰るか……」
僕は自分の下駄箱に向かった。
「随分と青春を謳歌しているみたいね!!」
階段を下りきった時、僕は階段の上から声をかけられた。
階段の踊り場には、腕組みをし、いかにも怒ってる雰囲気を醸し出す美少女が居た。
「なんですか、人の事振っておいて嫉妬ですか?」
「なっ!?べ、別に嫉妬なんかしてないもん!!」
春野さん、動揺が隠せてないよ。
「私はただ、振られたのに別の女の子と付き合って、尚且つ浮かれてる君がすごく腹立たしいの!!」
「そうですか、それではまた」
僕は教室に向かうため階段下を右に抜けようと歩き出した。
「まだ、話は終わってないわよっ‼」
春野さんは、階段をダッシュで降りてきて、僕の前に立ちはだかった。
「なんでそんなにすんなり私のことを諦めたのよっ‼」
「諦めるも何も、君が僕のこと振ったんだろ……」
「普通何が気に入らないとか聞くよねっ‼」
「聞かないだろ、普通振られたら諦めるでしょ」
「この根性無しが‼」
コイツ‼人が黙ってい聞いてればふざけんじゃねえよ
「大体、君が振らなければ君を諦めることなんてなかったんだ‼」
「な、わ、私が悪いって言うのっ‼」
「そうだよっ‼なんだよひとが何も言わないからってさんざん言ってくれて‼こちとら君のために1年間親密度上げて来れたと思っていたのに、それを簡単に振りやがって‼何様なんだよ今更っ‼もう僕の気持ちが無いことくらい察してくれよっ‼もう僕の心をかけさせないでくれ……」
僕は気が付くと、彼女の肩を掴んで言い放っていた。
彼女は目から涙が今にも溢れそうになっていた。
「ご、ごめん、言い過ぎた」
僕は彼女の横を通り過ぎて教室に向かった。
次の話に続く
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