EP_1 平穏な空間?

 閉じていたまぶたが急に開く。見慣れない天井だ。


「ここは……?」


 身体を起こそうと試みるが、腹部から瞬間的な激痛を感じる。


「うっ……」

 

 何とか痛みを感じながら上半身を起こし、激痛が走った腹部を恐る恐る確認してみる。腹部当たりを見ると肌が隠れるように包帯が巻かれ、その下からは赤い染みが滲んでいる。


 腕にも包帯が巻かれていたので、身体の確認をする。どうやら私は身体の至る所が負傷しており、下半身や腹部は完全に治癒をしておらず痛みを感じるようだ。


 私は何故治療された状態で寝ている? そもそもここは何処だろう? 辺りを模索するために首を動かし部屋の中を隅々と見渡してみる。


 複数のベッドが設置されて、見るからには病院といった感じだ。私は本部で治癒されてると考えてみたが、仮にここが軍事施設なら、負傷兵を診る軍医さんや衛生兵がいるはずだ。見渡してみても衛生兵らしき人物はいない。部屋の中にいるのはただ一人の私だけ。

 

 窓からは日光が部屋に侵食している。日差しの明るさ的に午前中と予測する。静かな空間でのほほんと天気を眺めて私は良いのだろうか。

 

 ドアの隙間から漏れる光が、部屋に明るさをもたらす。静かな足音とともに、扉が完全に開き、その姿が明らかになった。

 

「おはようございます。目が覚めましたか?」


 彼女は白い白衣を身に着けており。手には薬品や医療器具が入ったトレイを持ち優しい笑顔を浮かべて部屋に入ってきた。


 見た目から推測すると、この病院の看護師だろう。

 

「はい、目が覚めたようですが、ここはどこなのでしょうか?」


 アリアが尋ねると、看護師は優しく微笑んで答えてくれた。


「こちらはの医療施設です。あなたは病人としてここに運ばれてきました。大丈夫、安心してください。今は治療の最中ですから」


 病院の環境に安心し、看護師の言葉に一安心した。しかし、まだ状況を把握しきれていない。


「私はどんな負傷をしたのですか?そして、なぜ戦場からこんな平穏な病院にいるのですか?」


 アリアが訝しげに尋ねると、看護師は説明を始めた。


「あなたは戦闘中に負傷し、意識を失っていました。重傷を負ったため、軍からのお願いで、こちらで手当てを受けることになりました」


 私は戦闘で負傷したことを思い出し、少しずつ記憶が戻っていく。しかし、まだ不安な気持ちが残っていた。


「早く戦場に行かないと……!」


「ご安心ください、アリアさん。今は治療が最優先です。戦場に行くことは後の話です……」

 

 アリアは少し焦った表情を浮かべ、看護師の言葉に従って静かに横になる。


 看護師はトレイから薬品や医療器具を取り出し始める。


 窓から差し込む日差しは穏やかで、部屋の中には静寂せいじゃくが広がっており。私自身は状況を受け入れながら、少しずつ気持ちを整えてみる。


「でも、私は一刻も早く……」


「アリアさん、数日後あなたを迎えに来る方がいらっしゃるみたいですよ」


「私を迎えに来る人……?」

 

「はい。安心して、ゆっくりと休んでください。そのためにも、今は治療に専念してくださいね」


 ・・・・・・

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