武器の選定

「最初は武器だよな。やっぱり剣にする予定なのか?」


「そういう訳ではないが、ロウは当てがあるのか?」


「全く。でも、剣以外も持ってみたい気持ちもある」


 どうせメインの武器にはならないんだし、変わったものでもいいんじゃないかと思う気持ちもある。


「そうか…なら一応、他の武器も見てみるか」


「なんだよ一応って」


「ロウも実際に扱ったら分かるさ」


「そんなもんかな?」


「まあ、行くとしよう」


 リタについて行き街へと向かう。途中で門が見えたのでそこでリタが手続きをする。


「こんなところに門なんてあるんだな。」


「貴族街に入るためのものだ。無許可な人間を入れる訳にはいかないからな」


「そうか。んで、武器屋まではそこそこ距離があるのか?」


「まあ、ちょっと歩くな。流石に貴族街近くには置けんだろう」


「そういうことか。分かったよ」


 それから、15分ほど歩くと店に着いた。


「ここだ」


「へぇ~、思ったより大きいんだな」


「まあ、鎧一つでも場所を取るからな」


「そうか。セットならまだしも上下バラだったら大変だろうしな」


「そういうことだ。入るぞ」


「おう!」


 カラン


「ん、誰だ?ああ、リタか」


「どうも。今日は客を連れて来たぞ」


「あんたが客を?どういう…って男か?」


「女騎士以外で私が連れてくるなら男だろう?」


「そりゃあそうだが…あんた名前は?」


「ロウって言う」


「ロウか。それでリタよ。今日は何を探しに来たんだ?」


「ロウの剣をな。他にも一応見たいというからそちらも頼む」


「何が使えるんだ?」


「いや、実はほぼ素人で…」


「という訳なんだ。何か使いやすいものを頼む」


「分かった。裏に試しができる場所があるからそこへ行って待ってろ」


「ああ」


 俺とリタは奥のところから外に出る。そこには簡単な鎧を着せられた人形が立っており、どうやら普段からここで武器の状態を確認しているようだ。


「持って来たぞ」


 さっき話していた武器屋の主人らしき男がいくつもの武器を持って来た。


「さあ、好きなものを選べ」


「好きなものって言ったってな…とりあえずこれでも使ってみるか」


 まずは手近にあった斧を取ってみる。


「うてんん。やっぱり重たいな。持ち手側は金属じゃないってのに」


「ははは、そうだな。ほら、ロウ。まずは人形に当てる前に数回振ってみろ」


「リタめバカにしやがって!やってやるぜ!」


 俺は気合を入れて斧を振り回そうとする。しかし…。


「おもてぇし、なんかうまく使えねぇな…」


「はっはっはっ!ロウよ、そんなに力任せに振っても無理だぞ。ちょっと貸してみろ」


「うっ、うっせ~な。これからだよ、これから!」


 いきなり笑われて悔しいのでもう一度俺は斧を振り回す。しかし、どう頑張っても上手く振れない。


「おかしい…ゲームなんかじゃ筋肉だるまでもうまく使ってたのに…」


「何の話だ?ほら、貸してみろ」


 今度は仕方なくリタに斧を渡す。


「いいか?ちゃんと見ておけよ。こうやって斧は使うんだ」


 そういうとリタは斧を片手で持ち、振る時には手を添えてぶんっと振っている。


「ふぅ、まあこんな感じだな」


「すげぇな。俺の時とは全然違う。こうやって手を添えればいいのか?」


「ああ、それはそうだが、片手で振ろうとするお前はやり方が間違っている。体を使わないとな」


「そうか、腕の力だけじゃダメなんだな」


「斧は槍より扱いやすく見えるが、金属部分ははるかに多い。その分どうやって勢いをつけるかが大事なんだ。もちろん、かわされた時のことも重要だぞ」


「重たいから大振りになるもんな。でも、リタって斧まで扱えるのか?」


「扱えるというほどではない。ただ、一通りはこなせるぞ。相手の使う武器を知っている方が楽だからな」


「なるほどな。でも、使うには合わないな。俺には力が足りないみたいだぜ」


「そうだな。次はどれにするんだ?」


「う~ん。今度は槍かな?こっちの方が使いやすそうだし」


 そう思って俺は槍を手に取って突きを繰り出す。


「おっ!これならいけるんじゃね?」


「果たしてそうかな?今度は振ってみろ」


「振る?任せとけ!」


 さっきの突きで感覚をつかんだと思った俺は槍を振り回す。


「うわっと…振り回すだけなのにむずいな」


 ガンッ


 そのうちに、持ち手側が地面に当たる。


「おっと」


「ふっ、どうだ?槍も中々奥深いだろう?確かに長いからリーチも稼げるが、振り回すとなったらそういうことも考えないとな」


「うっ、分かったよ。俺の武器的にはこれもなしだな」


 飛び道具をかわされて、接近された時に槍は意味がない。これならナイフの方がましだろう。


「次は…おっ!これならいけそうだな。まあ、使うことはないけどな」


 俺は慣れ親しんだそれを手に取ると構える。


「うん?ロウそれは…」


 カァン


「うん、張りは弱いけどまあこんなもんだよな」


「ロウ、お前は弓が使えたのか?」


「ああ。でも、別に魔物を倒すためじゃなくて自己鍛錬の一環だけどな。大体、弓が使えてもなぁ。銃と被るし流石にないだろ」


「なあ、もう一度だけ射ってくれないか?」


「別にいいけど…」


 なぜかリタに頼まれたのでもう一射、射ることにする。


「こう、こう、んで、大三ッと。で、弓を引いて…」


 カァン


 放った矢は先程よりも鎧の中央部に当たり落ちる。


「…カ、カッコイイ。はっ!ああ、すまなかったな。しかし、いい構えと腕だな」


「まあ、二年ぐらいの成果だな。でも、さっきも言ったが使う機会はないから没だな」


「惜しいがそうだな。射程でもスピードでも劣ってしまう」


「という訳で次は…ん?こんなの使い物になるのか?」


 俺が次に手に取ったのはいわゆるフレイルだった。先端に鎖付きの鉄球が付いておりこれで攻撃するようだが…。


「なぁ、リタ。これって相手に跳ね返されたりしないのか?」


「だから、手前側の棒の部分が長めになっているんだ。短いと振り回すだけでも危ないからな」


「ふ~ん。ちなみに使ったことは?」


「1時間ほど。私には合わなかった」


「そうか。俺にも合いそうにないな。結局これか…」


 いくつか武器を扱ってきたけれど、どれも素人がポンッと持ってどうにかなるものではなかった。しょうがないので、俺はいよいよ剣を持った。


「せいっ!」


 ブンッ


 剣を持つのは初めてだけど、他の武器よりはなんか振りやすい。頭の中でイメージがあるからだろうか?


「それに、実物ってそこまで長くないんだな」


「まあ、騎士は盾と一緒に持つことが多いからな。重くて長い剣を片手に持っていては使いづらいだろう?」


「そうだな。でも、俺だと両手持ちの方がいいかも。結構これでも重いぜ」


「これでも鉄の塊だからな。ロウだと小型のデザインシールドにやや長めの剣がいいか」


「デザインシールド?」


「ああ、小型の盾は盾なんだが、我々は騎士だろう?小さい丸盾をそのまま付けたら行進の時に浮いてしまう。そういうのをカバーするために、多少動かしにくいがデザイン性を前面に出したものだ」


「普通のでいいんだけどな…」


「殿下の護衛をするのだ、諦めろ」


「じゃあ、武器も決まったし店で選ぶんだな」


「あっ、悪いな。色々持って来てもらって」


「いいってことよ。リタが連れてきた奴だしな」


 こうして武器を一通り試した俺は、店の中に戻ったのだった。


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