第6話 本当の理由
話している間、綾子さんが返事を返す間に少し時間があるなと感じた。綾子さんが運転中だからというだけではなくて、何か考え事をしていたのかもしれない。それなら「今度私が作ってあげましょう。」とか「今度食べに行きますか?」とかそんなことを考えていたのかなと勝手に想像していた。この手の話をしていると一人暮らしをしている女性なら、大抵は食事に誘ってくれるのだが、残念なことに綾子さんは現在一人暮らしではなく、実家に帰っているので家族と一緒に住んでいるわけだ。だからそれは無理だろうし、彼女はまだ23歳なんだ。これがずっと最初から一番大きな問題なんだ。僕たちが同じぐらいの年齢だったらもうとっくに次の食事会の話に移っていたタイミングだった。彼女が言葉に詰まり、返事をする間が少しづつ長く変わってしまったことにこそ僕たちの関係の真実があった。僕たちはあまりにも年齢が違いすぎた。彼女は本当に若く僕はもういい歳だ。当然同僚の彼女は僕の年齢を知っている。そのことが僕と彼女の会話を自然なものから遠ざけてしまうんだろう。
いつだってそうだが意味がなさそうなことのほうにこそ意味がある。彼女が話したことには意味がなく、彼女がどんな風に話していたかや話をしたタイミング、その顔つきや笑い方の方にこそ真の意味がある。
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