第5話 業務用スーパー

「今日業務用スーパーに行ってきました。」

「何かいいものありましたか?」

「そうめんを買いました。いつも行くイオンだと185円で5束しか入ってないんだけどそこは147円で10束入っていました。」

「安いんですね。」と綾子さんは驚いたように言った。

「そうなんです、だから2束買っちゃいました。」

綾子さんは嬉しそうに笑った。

「むかし、美浜に住んでいたことがあるんです。」

「そこには安いスーパーどころか、お店がないんです。だから安いお店を探して節約とかできなかったんです。」

「でも、美浜なら魚とか安いんじゃないんですか?」

「それが違うんですよ。全然売ってないんです、魚。」

「美浜って周りぜんぶ海じゃないですか。」

「だけど魚売ってないんです。」

「船が直接名古屋の港に行っちゃって、魚もみんな名古屋に行っちゃうんです。」

「最近、魚ぜんぜん食べてないなぁ。イオンの唐揚げばっかりで。」

綾子さんは笑った。何というか自分が好きで、可愛らしい女性がきびきび運転する車の助手席で、僕はなんだか幸せな気持ちで綾子さんが話すのを聞いていた。

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