CHAPTER 10
夜明け前の時間を少しだけ過ぎた警察署。
事件はそこかしこで起きる為に署内は依然として明るいままだが、その廊下を歩く招かれざる客がいたこともまた事実であった。
つかつかと廊下を歩き、角を曲がる。
その先にもあったのは、トモエ達が仮眠室として借り受けている部屋だった。
招かれざる客は、口元をニヤリと緩め、しばし思考を巡らせた。
ターゲットは、イズミだ。
だが、それでは物足りない。
ゴンダは全員を殺害するような指示は出していないが、自分の欲求も満たしたいではないか。
それに、何時何処で、こやつらが思わぬ牙を剥いてくるとも限らぬ。
今後の計画を長い目で見た場合、反逆因子は多く潰しておくに越したことはないように思えた。
なら、やはり全員殺すか。
いいや、と招かれざる客は頭を振る。
深夜とはいえ、ここは警察署である。
そこで大量殺人に及べば、自ずと後々やりづらくなることとなるだろう。
別の視点で今後の計画を長い目で見れば、やはりゴンダの指示に真っ当に従うべきのように思えた。
素直に、しておいた方がよさそうだ。
イズミを連れだし、他の場所で殺す。
これに尽きるようだ。
招かれざる客は意を決して、足を踏み出す。
ドアノブを、回す。
薄暗い、部屋の中をひっそりと見渡す。
獲物は何処だ。
招かれざる客が、ゆっくりその部屋に入ろうとした時だった。
「部屋を間違えたのか」
「!!」
暗がりから聞こえる声に、招かれざる客が肝を潰した。
男の声だ。
ターゲットは男ではない。
しかし、この部屋で間違いないはずだ。
何故ならば、ターゲットをこの部屋へ案内したのは
「自分(あんた)が宛てがった部屋なんだろ?なら、間違いじゃないさ。部屋は、な」
灯りが、ついた。
そこにいたのはターゲットではなかった。
「…お前は…!?」
「なるほどな。あんたもゴンダさんの回し者ってわけだ」
脇に、既にエンプーサの仮面を抱えていたアモウは、神妙な面立ちで招かれざる客の顔を見つめた。
「…カリマ、とかいったな」
「え?いや、あたしは…その、警護ですよ!警護!」
白日の下に晒された、招かれざる客‐カリマは、目だけを泳がせると、引きつった笑みを浮かべながら弁論に興じる。だが、アモウは表情を変えなかった。
「前提として、あんたが堂々と署内で人殺しに及ぶとは考えづらかった。何故なら、こんな所で騒ぎを起こせば、後々碌なことにならんだろうし、警官としてこの場所に姿を忍ばせている以上、あんたにとっても都合が悪くなるからだ。そうなれば必然的に、敵は静まった時間に接触を仕掛けてくる…俺達はそう踏んだのさ」
「な、なにを言ってるの?あたしは…」
「そして、セル・プロジェクトで覚醒した被験者はほぼ全てが亡くなっている…俺やトウコを除けば。つまり、ここに潜んでいたのは、あのリストに乗っていなかった先行被験者…あんたも、そのうちの一人だな?」
「何を言ってるの!」
「…ゴンダさんとはどういう関係なんだ?そもそも、あんたは本当に警官なのか?それとも…」
「…変質者。勝手に妄想でも喋ってろよ、気持ち悪い…!」
「気持ち悪いのはあなたでしょ」
「う!?」
背後のドアが開く。
そこには、ターゲットたるイズミとトモエ。それに、エツコやサクマも立っていた。
更には
「カリマぁ。ちょいと話、聞かせてもらおかぁ?」
窓の外側…3階下の駐車場から、ツジムラの声まで聞こえて来る。明け方前の時間帯だと言うのに、ご丁寧に拡声器での呼びかけだった。
「カリマあ。こっちには警官もぎょーさん付けとるさかい…抵抗しても無駄やでえ」
追い討ちとばかりに、声が続く。
その駆り立てるような真似に、謂わずカリマが舌打ちをしてしまう。
「アモウ君。頭の中、まだザワザワしてる?」
「ええ。ザワついていますよ…さっきからずっと」
「ザワザワ?な、な何を…」
「…あんたには、不完全な存在である俺の感知は出来ないだろうが、俺は出来るらしい。あんたみたいな、スプライトの接近ってやつをな」
「な、なにを…」
「この警察署に入った瞬間から、それはずっと感じていた。すぐに分かったよ。別の被験者が、この署内にいるのだとな」
「……っ」
「カリマさん。あなた本当に…」
「…ふん。揃いも揃って馬鹿みたいに騒いで…」
「ゴンダさんのことだ。俺達の逃げ込む場所など、幾らでも想定出来たはすだ。だったら、警察署も当然マークしてるはずだし、そこにあのリストに記載されていない被験者を配置していた…あんたらみたいな連中は、この街のそこかしこにいるんだろ?何処に逃げようが、あんたらはあらゆる手を使って追手を駆り出してくる…違うのか?どうなんだ?」
「秋津理化学研究所の奴らは馬鹿ばかりだと思っていたけれど…」
カリマが、ふざけたように笑いこける。
「私の正体を見破ったところまでは褒めてあげるよ…でも、それでどうするつもり?あんたらの言う通り…あたしはゴンダさんの知り合いだし、スプライトの一人。ツジムラのハゲまで焚き付けて、あたしを包囲でもしたつもりなんだろうけど…あんたらなんかね?イチコロで殺せるよ?」
「知り合い…ね。トウコみたいなもんか?」
「はん!あんな馬鹿女と一緒にしないでよ。あれもゴンダさんとは昔からの知り合いらしいけど…所詮は後期型!どこの馬の骨とも分からん女なんかと、先行試作型の私を同類扱いをしないでほしいよ!!」
「仮にも警官として、ここにいるんだろう。人道に反した行動を取るつもりか?」
「人道?ゴンダさんの教え程、人道的なものはないわよ!!」
途端に、アモウの頭の中がより一層、ザワザワと騒ぎ始める。
なるほど。
コイツは、どうやら普段は限りなく人間に近い状態にまで戻れるらしい。頭の中のザワザワは元々聴こえていたものの、今の比ではない。アキノの遺した言葉からするに、このカリマ某がセル・プロジェクト以前に造られたプロトタイプである可能性は極めて高いのだろうが、そのアキノとは違って直ぐ様感知は出来なかったことを思えば、中々に厄介な存在だと言える。しかし
「イチコロで殺せるかは、どうかな」
「どうもこうもないよ…ブチ殺してやるよ!!」
額から触覚が伸び、肩周りから変化を起こす。
カルマの姿は、カメムシを思わせる怪物‐スティングバグ・スプライトへと変わった。
「さあ、みんな。あとはアモウ君に任せて下がるわよ…」
イズミが、他の面々を先導して部屋を出ようとする。だが、スティングバグ・スプライトは、それを制するように右手を突き出した。
「逃さないよ、おばはん。あんたを殺れって言われてるからね。あたしは、仕事は忠実にこなす主義なんだよ」
「やってごらんなさいよ!」
「余裕綽々だわね…その態度、気に食わないよ!死ね!!」
掌から、甘い香りのするガスを散布させる。
何処と無く、青リンゴのような香りだった。
「うっ…!目が痛い…!」
トモエが目を押さえながら、蹲った。イズミもエツコも、口元を咄嗟に押さえようとするが
「無駄だよ。それは神経系の催涙ガスみたいなもの…たくさん吸えば、呼吸困難になって…死ぬよ」
スティンクバグ・スプライトが、憐れむようにトモエ達を見下ろした。細い瞳が、ニタリと歪んだラインを作る。
「じわじわやらずとも、一気に嬲り殺した方が早いのは分かってるよ。今回はおばはんだけを殺せって指示だったけど…もうバレちゃあ、意味ないよね。だから…仲良くみんな…じわじわと地獄に送ってあげるよ」
「カリマさん!あなたは一体何者なのです!ゴンダさんに何故そこまで妄信的に…」
「サクマさん、だっけ。あなたは誰かに助けてもらったことってある?」
「何ですって…?」
ガスが充満する中で、歪んだ細い瞳を、今度は横一文字に更に細める。
「あたしは昔…看護師をしていたよ。でもそこで酷い目にあった。他の人に裏切られて…友達や親からも見捨てられるようなことが。投薬ミスの責任を、押し付けられたよ。使えない無能な医者の、典型的な医療ミス!あたしは何も関与していなかったのに、だよ。でも、その時の上司だったゴンダさんだけは…あたしを信じてくれたよ」
「ゴンダさんが元々医療関係者だったことは知っていましたが…」
「他人てのは、助けてくれないんだよ。でもあの人は…あの人だけはあたしを信じてくれた!その恩義に報いたいと思うことが、おかしいことなの!?」
「恩義に報いたい、という思いは分かります。しかし、彼がやっていることは…!」
「間違ってる?違うよ。あの人が言うことは、全て正しいんだよ。仮に間違いなんだとしても…あたしはもうそういうふうには考えられないんだよ!この身体を授かった時からねえ!」
「だったら」
仮面を被り、ブレードを携えたエンプーサが、スティングバグ・スプライトの前に立つ。
「あんたも駆除するしかなさそうだ。理由がどうであれ、殺人教唆を真に受ける奴など、放っておけるかよ」
その姿に、スティンクバグ・スプライトは肩を揺らしてケラケラと笑いながら、手を叩く。あからさまに、馬鹿にした態度だ。
「…その仮面のお陰でガスも効かないってこと?でも、凌げるのはガスだけだよ?」
「そいつはどうかな」
「いいよ。あんたみたいな不完全な存在が…ゴンダさんの計画には一番いらない存在なんだよ!消してやるよ!!」
助走もなしに、スティンクバグ・スプライトが突如として体当たりを繰り出してくる。
図体の割には機敏であり、エンプーサは咄嗟の防御が間に合わない。
肩口に衝撃を受けるのと同時に、後方の窓ガラスを叩き破りながら外界へと吹き飛ばされてしまった。
たちまちの内に、下の方から拡声器越しの、ツジムラの悲鳴が聞こえる。
「あ、アモウさん!」
「駄目だトモエさん!まずはこの部屋から出るんだ!」
そそくさと踵を返そうとする四人。
だが
「逃がさないよ。そう言ったよ!」
「うっ…ぐ…」
鋭利な手が、イズミの華奢な首を掴んでいた。
「イズミさん!!」
「おばはん…!お前のせいでゴンダさんは迷惑してるよ…」
「あらぁ、そぉ…それは…光栄ですこと……」
「相変わらず余裕な態度…本当に気に食わないよ、アンタ…」
「やめろ!!イズミさんを離せ!!」
「サクマさん。あんたも運が無かったよ。でも…ゴンダさんに楯突いた時点で、あんたらの命運は決まっていたんだよ!こんな風にね!!」
スティンクバグ・スプライトの掴み上げている手。
その掌から、より強いガスが放たれる。
それはイズミの顔面を覆うようにして、そして目や鼻、口…穴という穴から吸い込まれるようにしてイズミの中へと入っていった。その様相に、エツコが血相を変える。
「やめなさい!!イズミさんを…」
「そういえばいたね…あんたみたいなおばはんが、もう一人…。何処の誰だか知らんが、直ぐに後を追わせてあげるよ」
イズミの身体はガクガクと痙攣し、持ち上げられた身体を思い切り床へと叩きつけられてしまった。その様に、普段は冷静で穏やかなサクマも声を荒げてしまう。
「イズミさん!くそぉぉっ…!!」
「はっはっは!ほら、イチコロだよ!イチコロ?あんたらなんかねえ、石ころみたいに、イチコロで粉砕出来…」
「ふざけるな!!!」
「ぁっ!?」
割れた窓ガラス。
そこから鋭利なブレードが伸びたかと思うと、忽ちのうちにスティンクバグ・スプライトの身体が下から這い上がってきたエンプーサによって捕縛された。
「なっ…アモウ…!!テメエ…!?」
「お陰で落ちる手前だったよ、危うくな!だが詰めが甘いなカメムシ女!!」
「ぐうっ…くそったれがあ!」
次いで、完全に上半身が這い上がってくる。
エンプーサは、怒りの形相でスティンクバグ・スプライトを後ろから羽交い締めにした。
その際、彼はイズミに起きた異変に初めて気付いた。
「!?イズミさん!」
「くっ…ははは!あっはっはっは!!ざまあないねぇアモウ!!イチコロだと言ったよ!?さっきねえ!!」
「お前!!イズミさんに何をしたんだ!?」
「ふふふ…致死量の…ガスを吸わせてやったよ!!もう、助からないよ…!多分ねえ」
「貴様ぁ!!」
羽交い締めにしたまま、左腕でスティンクバグ・スプライトの顎を下から力任せに捻り上げる。
「殺したのか!?イズミさんを!?何故…!?」
「あいつが、あんたに要らぬ措置を施したりしなければ、助かったんだよ!つまりは、全てあんたの責任ってわけだよ!!」
「貴様ァァァァ!!!」
エンプーサが、そのままチョークスリーパーの要領でスティンクバグ・スプライトの首を締め上げる。
「人をどれだけ苦しめれば…どれだけ悲しませれば気が済むのだ!?貴様らはぁぁぁぁ!!!」
「馬鹿っ…それが、あたしらの存在意義だと…どうして分からないの!」
「何が恩義だ!何が存在意義だ!!そんなもん、貴様のエゴだろうが!」
「き、きさっ…」
「駆除してやる!何が何でもな!!!」
羽交い締めのまま、両者が再度窓の外へと抜ける。
今後こそ、その身体は三階の高さから落下していき…
エンプーサに踏みつけられる形で、スティンクバグ・スプライトの身体が叩きつけられた。
「ギィアアぁぁぁぁ!!!」
「撃つな!!」
いつの間にか、拳銃を突きつけていたツジムラ達に対して、エンプーサは顔を向けた。
「俺が…駆除する…」
「せやけどアモウはん、それは」
「撃つなと言ってるだろ!!」
「お、愚か…だよ…折角ゴンダさんが…お前に力を…」
「そんなものは欲しくなかったんだよ…そして、俺は他のものを失うばかりだ…」
"エクスターミネーション"単分子ブレードを、思い切り振り下ろす。
その刃は、スティンクバグ・スプライトの胸部を一撃で叩き割った。
「全部貴様らのお陰だッ!!!この虫ケラ共がぁぁ!!」
幾重にも叩きつけられるブレード。
その度に、血が飛び散る。
だが、何度目かの攻撃を、転がってかわしたのち、再び立ち上がった。
「む、虫ケラだって…?聞き捨てならないよ!」
「害虫風情が…いけしゃあしゃあとほざきやがって…!その身体で何が出来る!?」
「はん…そのあんたも害虫風情なんだとしたら、どうするよ?」
「戯言を…」
「確かにあんたの身体は、セルアウトの進行を抑えられているのかもしれないよ。でもそれは…所詮遅らせているだけだよ。時間が経てば、あんたもこっち側…害虫の仲間入りだよ」
「言いたいことはそれだけか」
「ゴンダさんはね、アモウ…アンタを欲しがってるよ」
「何だと…」
「別に、あたしにとっちゃあんたを殺すことなんて訳ないよ。でも、それじゃあゴンダさんの計画を邪魔することになってしまう…だからイズミを狙ったんだよ!二度とあんたに余計な措置を取れないようにね!!」
「俺はゴンダの言いなりになぞならん!!俺は俺の意思で決めたんだ…貴様らを駆除すると!!」
「馬鹿だよ!あんたは!」
割れた外殻から血は流れ出ているものの、スティンクバグ・スプライトは意外にも機敏だった。ただただ、虚勢を張っているのではないようだ。
思った以上に、与えたダメージは少なかったらしい。
「カメムシ由来の、装甲の厚さって訳かよ…!」
「そうだよ…害虫だのなんだのと嫌われ者のカメムシだって、手にすりゃあ優れた性能だよ!!」
翅を広げ、中空からの滑空。
そのまま、鋭い鉤爪がエンプーサの首元を狙う。
やはり機敏。
だが、その手は喰らうまいと、エンプーサが横なりに身体を反転させる。
鉤爪は、空を切った。
だが、感じる僅かな違和感。
一瞬、動きが鈍ったのが自分でも分かった。
…そろそろ、限界か?
「生意気だよ!」
着地したスティンクバグ・スプライトが、すかさずこちらを振り返る。
そして
「ぐぅ!」
前蹴りが、エンプーサの腹を直撃した。
「ん~~?さっきまでの威勢はどうしたよ?こんな傷まで付けてくれちゃってさ…」
「くっ…」
エンプーサ‐アモウの動きが、今度は露骨に鈍る。
彼には懸念すべき点があった。
忘れていたわけではない。
ただ、生物をやっている以上、これだけはどうしようもない点でもあった。
疲労である。
セル・プロジェクトの騒乱から一貫して戦い続けてきた彼には、尋常ならざる疲労がのしかかっていたのだ。
3体ものスプライトを屠っているのだから、無理もない。
幾ら半スプライト化しているとは言えども、元は人間である。
疲労しないなどという虫の良い特典は、ついていないのだ。
「そうか…そういうことか。あんた働き詰めだよ?労災申請はしてる?」
「馬鹿に…しやがって…!」
膝を奮い立たせ、何とか立ちあがる。
しかし、力尽きるまでどれくらいもつのか。
エンプーサの仮面の下で、アモウは焦りを露わにした。
すかさず、外線機能を起動し、サクマのスマートフォンへ電話を掛ける。
「…サクマさん。聞こえますか」
《アモウさん!無事ですか…》
「そっちは…どうなってますか…」
《とりあえずあの部屋からは脱出しています。今は、イズミさんの搬送準備を…》
「駄目だサクマさん!市内の病院は使うな!」
《え…?》
「ゴンダのことだ…絶対に他の刺客を配置してるに決まってる!ましてや病院など…真っ先に先回りされる場所だ!!」
《では…どうすれば…》
「申し訳ないが、それはそっちで考えてくれ!!僕も、一旦退くことを検討している…もう身体がもちそうにない…」
《警察の方は援護なしですか!?》
「スプライト相手に敵うもんじゃないでしょう…」
「なあに?独り言?何をペラペラと…」
嗤いながら、スティンクバグ・スプライトが迫る。
「あ、アモウさあん!!やっぱり、あたしらも…」
「ツジムラさん!あんたらが敵う相手じゃないんだ!!逃げてくれ!!」
「せやけどお!!」
「うるさいよ、全く。もう、そろそろ死んでよ。面倒くさくなっちゃったよ」
掌から、紫色のガスを噴出させる。
青リンゴのような、香り。
不味い、とエンプーサは声を張り上げた。
この一帯の警官を、奴は皆殺しにするつもりだ。
「ツジムラさん早く!!あのガスを吸わされたら、一巻の終わりだぞ!!他の警官を連れて逃げてくれ!!」
「あんたは大丈夫なんですかあ!?そんな身体でえ!?」
「何とかする!!だから早く!!」
「無駄だよ。もう、決めたよ。ここら一帯、ガスを散布して皆殺しにするよ。それに、あんたを生かしとくと後々厄介なことになりそうだよ」
掌からガスを散布し続けるスティンクバグ・スプライトは、じりじりとエンプーサへ歩を進める。
「さあ。念仏でも唱えなよ、アモウ。他の奴らも、直ぐに後を追わせてあげるよ」
「ぐっ…」
昨日から未明までに屠ったスプライトは3体。
そのどれよりも、このスプライトは強敵だった。
カメムシだ不快害虫だと普段は馬鹿にしているが、人間と同等のサイズになればその恐ろしさがよく分かった。
神経ガスという形にデフォルメされてはいるのだろうが、彼らの持つこのお馴染みの能力。
人間など、確かにイチコロで殺されてしまうだろう。
イズミは、無事なのかー
そんなことを、考えてしまっていたその矢先のことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます