「前世の僕は大人なぁ。」

 残された僕は、ケーキを食べながら呟いた。

 ヒーローになりたいって夢は、ずっと前から持っていたらしい。彼の前世は全く知らないけれど、僕自身の前世は知ることが出来た。

 ヒーローになりたい夢は捨てた、って言えちゃうなんて。僕はまだ引きずっているって言うのに。

 食べ終わってから、夕方の涼しい風に気づく。僕の生きる時代には、こんなに涼しい季節はなくなった。

 もう一度メニューに書いてある値段を眺めて、この時代の物価の低さに感心する。昔から収入はほぼ変わってないって婆ちゃんも言ってたし、物価の高い社会で生きてた自分だから安いと思えるんだろうけど。

 メニューを戻し、テーブルに置いた手帳を上着に仕舞った。この手帳には、僕が昔から調べた色んな人が書かれている。成功した人、支持を集めてる人、尊敬に値する人、大昔の偉人。自分が思う"ヒーロー"を探して記した手帳だ。

「さて、とりあえず帰る方法でも探しますか〜」

 僕は支払いを済ませて店を出た。

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