第171話

 ステラの言うことはもっともだ。援護射撃のように、ナノも「そうだぞ!」と強めに言っておいた。たじたじになりつつも、イーズはずっとにまにましていた。


 ふたりは自分の道が見えている。自分はどうしようか。この旅はいつか終わりを迎えるのだとわかっていたのに、ずっと三人で一緒にいるような気がしていた。

 ナノは三角巾の中にいるマーメイドをそっと撫でた。


 ──わたしはどこへ行ったらいい……? どうしたい?


「……わたしはまだ時間がいりそうだな……」


 ナノがつぶやくと、イーズがナノの手をぎゅっと握る。ちょっとやそっとで離れないような強さで、温かくて、優しい手だった。


「すぐ決めるものでもないよ。ナノが迷ったときには、僕も力になる。泣きたいときには胸も貸すし」

「イーズ……ありがとう」


「えー、おれも借りたい。イーズの胸とナノの太もも」

「なんだそれ」

「泣きたい夜のお供だろ」

「僕のはいくらでも貸すけど、ナノはだーめ」


 だーめ、と言いながらイーズはこらえきれずに吹き出した。それにつられてステラも笑いだし、ナノも続いた。

 ふと空に目線を戻すと、流れ星がひとつ過ぎていった。あまりに急すぎて願いごとを考える間もなかった。次流れたらなにを願おうか。


 当面は、未来のこと?

 イーズとステラの夢が叶いますように?

 夢が見つかりますように?

 みんなが健康でありますように?


 ──星ひとつじゃ叶わないかもしれないな……。


 ナノはもう一度空に手をかざす。指の隙間から見えた星は、小さいけれど懸命に光っていた。

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