第170話

 食事を終えてから星を見ようと外に出ると、ステラとイーズが庭にマットを敷き、寝そべりながら夜空を見上げていた。


「ふたりで語らっているのか?」


 ナノの声に反応してふたりがゆっくりと身体を起こす。


「まあ、そんなとこだな」

「これからのことを話してたんだ。ナノもどう?」


 ふたりが詰めて座り、ナノの場所を作る。ステラが先に寝転び、イーズも同じようにする。ナノも腕を庇いながら仰向けに寝た。


 相変わらず星がきれいだ。

 旅を始めたばかりの頃に、三人で星を見たのをナノは思い出していた。手を伸ばしても届かなくて、絶望的だと笑い合った。そして今も同じだった。


 それでももしかすると届くのかもしれないと思ってしまう。ナノは空を撫でるように手を動かした。


「……これから、ふたりはどうするの?」

「おれ、ルークさんにこのままついていくんだ。正確にはジャックさんに。学校作りたいなら、教養を身につけろって言われてさ。ジャックさんのお兄さんが小さい塾をやってるらしくて、そこの手伝いを紹介してくれるらしい。勉強しながら頑張るわ」

「ルークさんとジャックさんに学校の話をしたのか?」


 ステラは空を見上げたまま黙り込んだ。


「……そういやなんで知ってたんだろ……話したかなおれ……まあなにかの流れで話したんだろうな」

「……? まあ、なにはともあれ、夢へ近づけそうでよかった。応援してる、ステラ」


「お……おう、頑張る。なんなら惚れ直してくれていいよ?」

「スーテーラ? その冗談は笑えないよ」


 イーズが頬を膨らませながら言った。けらけらと笑うステラの声と、イーズの膨れっ面がおかしくて、ナノも遠慮しつつ笑った。

 ステラは星を撫でるように手をかざした。ナノよりも長い手は星をたくさん掬えそうだった。


「イーズはどうするの?」

「僕は……とりあえず一度養成校に戻って、卒業するのが当面の目標。それから……警察部隊に入りたいと思ってる。僕は人を守る仕事がしたいなって」


「そうか。イーズなら向いてると思う。イーズが叶えるところ、わたしも見たい」

「いい夢だと思うけど、自分のこと蔑ろにはすんなよ。自分のことは自分でしか守れないんだから」

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