第169話
ルークから紳士的な笑みを向けられ、ナノは恐縮しつつもソファに座る。
なにを話せばいいか困ってしまい、ナノはもごもごと口を動かすだけだ。
「ねえ、青の絵画は海の近くに保管されていたと仰っていましたよね。絵の状態は相当悪かったのではないですか」
「あっ……うーん……あんな場所に保管していた割には、きれいな状態だったと思います。ただ美術品として売るとしたら……どうなのかなってところでした。わたしは美術に詳しくないから、わからないけれど」
「なるほど。新聞にも書かれていたとおり、これからあの絵が本物のユーリ・シオンの絵かどうかの検証が始まります。絵の検証にあたって、絵の状態を指摘されるでしょう。どこに保管されていたのか、なぜそんな状態の場所にあったのか、兄さんがなぜ未発表のまま亡くなったのか、兄さんはそもそもどうして亡くなったのか、兄さんが亡くなって絵が出るまでになぜこんなに時間がかかったか、などなど……細かい学者や記者あたりはきっと突っ込みたがるでしょうね」
ルークは顎に手を当てる。
いったいなんの話だろうか。ナノは不思議がりながらもルークの話をじっと聞いていた。
「その疑問にアヴァリーがすべて答えられればいいのですが、きっと大変でしょうね。真実は話せないでしょうし」
「……それはどういう……」
ルークの意図を確かめようとしていたら、ジャックから呼ばれ、ふたりは食卓へ向かう。なぜルークがそんな話をしたのか、ナノは聞くことができなかったけれど、美味しいご飯に夢中になって、続きを話すのも忘れてしまった。
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