第166話
ルークは車椅子を動かして、イーズとステラに近寄る。ふたりはさっと立ち上がり、ルークに対し深々とお辞儀をした。座って、と柔らかい声で促され、イーズとステラはゆっくりとソファに座り直す。
後ろからジャックもやってきて、ルークをソファに座らせると、ルークの隣に腰を下ろした。
「きみたちも、お疲れ様。ありがとうございました。申し遅れたけれど、僕はユーリの弟の、ルークといいます。きみがイーズくんで、獣人のきみがステラくん」
「はい。こんな遠くまでお越しいただいてありがとうございました。お身体は……」
「ぼちぼちです。あなたこそ、刺されたと聞きました。お加減はいかがですか」
「僕は……まあ、喧嘩がある程度できるくらいには回復してます」
そう言ってイーズはにこりとした。あの後傷が開きかけて、医者にしこたま叱られたことは話す様子がないので、ナノも黙っていることにした。
「ステラくん、アヴァリーがだいぶご迷惑をおかけしました。命まで狙っていたとか」
「いえ……その、おれこそ。おれ、途中までアヴァリーに情報流したりとか、してて……お金が欲しくて」
ステラはルークとジャックを見ては、視線を落とすを繰り返した。イーズに軽く背中を叩かれて、びくりと背筋としっぽを伸ばす。その様子を見てジャックがくすりと笑った。
「きみからの報告が減って、アヴァリーはいらついていたようです。お金さえ積めば獣人は自分の思いどおりになる、という驕りが招いた結果ですよ。人の感情をなめているから、そうなる。だからきみが謝る必要はありません。そう思わない? ジャック」
突然話を振られてジャックは目を丸くする。いつもはあまり表情がない彼に、わずかな驚きが見られてナノは意外に思った。
ネモとふたりで四人に近寄る。お茶の用意をしようとしたら、イーズとステラが立ち上がって動いてくれたので、ふたりに任せた。
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