第158話
ナノはイーズの行動をなぞるようにして、イーズの手をとる。ナノのふた回りくらいは大きく重い、強くあろうとした手だった。そっと唇を落とすと、雪の下から芽吹く花のように胸の中がじんわりと熱くなった。
干潮の時間が近づいて、青の絵画をどうするのかと四人で話をした。一旦ネモの家に持ち帰ることにしたけれど、その後のことは決まっていない。
「ナノの好きにせい。ワシはいらん。まずはユーリの弟に見せてやるんじゃろ?」
「はい。街に戻ってから、ルークさんにお手紙を書く予定です。まあ、もしかするともうこちらに向かってる可能性もありますが……」
ナノは先日ルークからもらった手紙の内容を思い出す。先日返事を送ったから、もしかすると本当にこちらへナノを引きずりにくるかもしれない、とちらりと思った。
「ルークさんが欲しがるなら、あげようと思ってます。イーズは……?」
「ルークさんがいらないって言ったら、もらおうかな」
「そうか。ステラは?」
「おれは……まあ、おれも余ったらもらうわ。できたらあのバカエピソード付きのやつがいいな。思い出して何度でも笑えるし」
ネモの話を思い出したのか、ステラの顔が次第ににやけていく。
亡くなってから、会ったこともない人物に笑われるというのはどんな感覚なのだろう。ユーリに尋ねてみたいとナノはこっそり思った。
「おまえらは欲がないのう。あの絵は相当高値で売れるというのに。金持ちたちはこぞって手に入れようとしておったし、あの親戚の男なんか、描いたそばから青の絵画を売りに出しておったというのに」
そう言いつつも、ネモの白いふわふわのしっぽは大きく揺れており、三人は気づかないふりをした。
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