第153話
「……他の絵も見ていいですか?」
イーズとステラも各々持っている袋から絵を取り出す。
「ステラのは……おっ、おまえそりゃ当たりじゃ」
「当たりとかあんのかよ。なんで?」
ステラが持っている絵は、ナノが持っていたものよりも明るい青で描かれている。真ん中には黒に近い青色をした、魚のようなものが描かれていた。
「ユーリがそこに落ちて、ガバガバ言いながら上がってきたときのことを描いた絵らしい。おもしろエピソード付きじゃぞ」
ネモは暗い海面を指さした。そういう話を聞くと、先ほどまで怯えていた海面が、とたんに愉快な場所に思えてきた。
ナノとイーズは笑いをこらえきれず、吹き出す。
「ユーリってすごいやつだと思ってたけど、案外バカだったんだな」
「ああ、おまえよりもバカかもしらん」
「あっはは、おれよりもバカって相当……つか、おれを引き合いに出さないでくださいよ」
ユーリがそばで聞いていたら、頬を膨らませて文句たれるだろう。想像したらおかしかった。
最後に、イーズが持っていた絵に目を向けた。
「これは……青、なのか?」
ナノは少し離れて見たけれど、薄暗いせいかよくわからなかった。ネモがランタンを近づけてくれたものの、やっぱり青とは呼びがたい色をしている。
この一枚だけ、他の二枚より淡い色彩で描かれている。美しい絵ではあるけれど、青の絵画、といわれると思わず首を傾げてしまう。
「うーん……青といえば青に見えなくもない?」
「おれには紫に見える」
「わたしは桜色に見えるな」
ランタンの灯りが混ざっているせいか、それとも絵の手法なのか、三人にはわからない。
ただ、これだけ他の三枚とは異なるのは確かだった。はっきりと青色とは言いがたく、青の絵画と呼ぶべきものなのか悩ましくもある。
「これを見せてくれたときに、しばらくは画家として絵は描かんとユーリは言った」
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