第151話
ステラのことはナノもイーズも話せずにいたけれど、ナノが仮眠中にステラが自分で話したようだった。
「よく話せたな。どんな流れでその話に?」
「青の絵画を見に行くんだ。隠しごとは全部清算しとこうと思って。それでネモさんがだめって言うなら諦めるつもりだった」
「はん。最初からおまえのことは怪しいと思っとったわい! しっぽを出したところで叩いてやろうと思っとったんじゃい!」
「ああそうっすか。はいはい」
ネモがイーズの背中の上で暴れようとするが、イーズになだめられておとなしくなる。しっぽだけは勢いを失わずに左右に振れていた。
小島に近づくにつれ、海水の高さが増す。つま先がしっとりと濡れ、靴の中には砂が入り込む。それを気にするまもなく、ネモの案内に従って小島に上陸した。
人は住んでいない島で、ネモでさえ染料の採取で年に片手で数える程度訪れるくらいだった。
「こっちじゃ」
ネモが岩場のほうを指さす。思っていたより足場は悪くない。ナノはステラに支えてもらいながら、ときおり滑りそうになりつつ、しばらく進むと、洞窟があった。入口に立っただけでもぞくりとするほど、真っ暗で奥が見えない。
ネモの荷物からランタンを取り出し火をつけると四人のまわりがぱっと明るくなった。
ナノが先頭を歩き、道なりに進む。奥へ行くほど冷気が薄らいで、湿気がまとわりつく。こんなところに絵画を保管したら──いや、それでこそユーリの目的どおりになる──ナノは止まりそうになる足をどうにか動かした。
「ん……行き止まりだ」
ナノたちが歩いてきた以外に道はなく、目の前は海と繋がっており、このまま進めば海に落ちてしまう。
嘲笑うような波の音が岩壁にぶつかり反響する。暗い海面は誘うように揺れ、気づけば手を引かれてしまいそうだった。
ナノは思わず隣にいたステラの服の裾を掴み、暗い海面をじっと見ていた。
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