第149話
お腹がいっぱいになると、とたんに眠気が襲ってきてナノはそのままベッドに身を預けた。
しばらくしてイーズに起こされる。
イーズはベッドに腰掛け、寝ぼけ眼のナノに対し穏やかな眼差しを向ける。そんな目で見られるのはいつものことなのに、寝起きのせいなのか気恥ずかしくて両手で口元を隠した。
「よく眠れた?」
「……うん。これで朝方まで起きていられると思う。イーズは?」
「僕は夕方まで寝てたから平気。青の絵画、楽しみだね。どんな絵なんだろう」
──ゆっくりと朽ちさせ……それでようやく完成なんじゃ。
ネモがわざわざふたりを追い出して話していたことだったので、イーズに伝えてもいいか迷ったけれど、ひとりで抱えきる自信がなかった。
「……ネモさんが、青の絵画は朽ちて完成するって言ってたんだ。その意味がよくわからないけれど、見たら納得できるかな。なんだか……この旅の意味がなくならないか、ちょっと不安なところもあるんだ」
「旅の意味?」
「わたしたちは青の絵画を探すために旅をしてきた。ルークさんに青の絵画を見せるという目的もある。だけど朽ちて完成するものであれば、その目的は果たされない。この旅の意味はなんだったんだろうと思うんだ」
イーズは難しい顔をした。
今までの時間に意味がない、というのはいささか乱暴な言い方だったかもしれないとナノは後悔する。それでも、不安を口に出さずにいられなかったし、イーズはどう思うのか気になった。
「そうかもしれないけど……少なくとも僕はこの旅に意味がなかったとは思わない」
「どうして?」
「まあ、いろいろあったけど楽しい旅だったし。それに……うーん……今はちょっとうまくまとめられない。そうだ、ちゃんとまとめられたら聞いてくれる? そうしたら、少なくとも僕の旅は大きな意味を持って終えられる」
「そうなの? じゃあこの旅に意味を持たせるために、イーズの話を聞きたい」
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