第148話

 夕飯の時間になってもイーズとステラは起きてこない。ふたりを呼びにいくと、ふたりともベッドの上で大の字になって眠っていた。


 軽く揺り起こし、夕飯の時間だと告げる。ふたりが山から帰ってきてベッドに転んだときには青空が広がっていたのに、すっかり陽が落ちていたのを見て、イーズもステラも呆然としていた。


「わあ……なんか時間をすっごい無駄にした気分……」

「そんなに寝てたのか、おれたち」

「ふたりとも気持ちよさそうに寝てた。夕飯の時間だけど……食べられるか?」


 イーズとステラは若干困った様子ではあったが、こっくりと頷いた。

 ふたりはテーブルの上のソーセージをなにごともなかったかのように食べていた。ネモはふたりを見ながら、二日酔いは飛んだか、とけらけら笑っていた。


 食事を終えると、ネモはテーブルの上に地図を広げた。地形から察するにこの周辺の地図のようだった。


「よいか。夜中になるとこのあたりの海は一気に潮が引く。そのときにこの島へ渡るんじゃ」


 この街から少し離れた小島を指差す。人は住んでいないらしい。

 ネモいわく、潮が引くと本来なら海である場所を歩くことができる。


「潮が引くとき? それなら夜中じゃなくても、昼間に潮が引いたときでも……」

「はん、できるだけ早う行きたいじゃろが。今から一番近い干潮の時間は夜中じゃからの」


 ネモはにかっと笑った。ステラも納得しているようだった。


 夜中に海を渡るなんて経験はこの先ないだろう。ユーリとアイがどんな景色を見て、なにを思って、ユーリが絵に込めたのか。青の絵画を見てそれがわかるのだろうか、朽ちてしまっているのだろうか──ナノの中で疑問がぽこぽこと泡のように浮かんでは消えた。

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