第147話
山に登って疲れたのか、イーズとステラは帰ってくるなりベッドに飛び込んでそのまま眠った。夕方頃になってようやくふたりも調子を取り戻したらしく、お腹が空いたと言いながら残っていた豆のスープを飲んでいた。
買い物から帰ってきたネモは大きなリュックに食料やら防寒具などを詰め込んでいる。ナノも準備するんじゃ、と言われ、ひとまず支度をする。イーズとステラの分も適当に荷造りをしておいた。
まるでキャンプにでも行くような荷物だ。青の絵画は山奥にでも隠されているのだろうか、とナノはぼんやりと考えていた。
隠し場所のことよりも、今は青の絵画と対面できる安心感のほうで胸の中が満たされている。
「ふふ。楽しみか?」
「楽しみ……うーん、楽しみもあるのですが、ようやくといった気持ちのほうが強いかもしれません。あの、ユーリの弟さんもこちらに呼んでもいいですか。青の絵画を最期に見たいと言ってて……」
「ああ、弟がおるとユーリが話しておった気がするのう。最期、とは……」
「病気で……もう長くなくて。だから、どんな状態であれ青の絵画を見せたいんです。先に所在を確認してからと呼ぼうと思ってて……」
「構わん。呼んでやれ!」
ネモはかっかっか、と高く笑う。すっかり二日酔いは飛んでしまったようだ。
「ナノ、少し仮眠を取っておくのじゃ。その前に夕飯もしっかり食っておかねばのう。肉屋でとびきり美味いソーセージを買ってきてやったわ。食べたことないじゃろ」
ネモは買ってきたソーセージを自慢げに掲げる。切れているソーセージではなく、渦巻き型のものだった。ヴェルデ村で働いていた売店で見たことはあったものの、贅沢品だったので手が出なかった。
ソーセージを前にナノは胸を膨らませた。こんなものが食べられるなんて、と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます