13 ナノと青の絵画

第141話

 この街は星がきれいに見えるとネモから聞いて、ナノは外に出てみた。庭のベンチに腰掛けて見上げると、ダイヤを散りばめたような空があった。


 以前にイーズとステラと並んで星を見上げたことを思い出す。だれひとり届かない星空を絶望的だと話していたのを思い出しながらも、やっぱり届くような気がした。


 手を伸ばして、星を掴むように拳を作る。ぱっと広げる。手にはなにも残らなかった。


「なにやってんの、ナノ」

「ネモさんからこの街は星がきれいだと聞いて、眺めていたんだ。掴めそうだぞ」

「ふうん、どれどれ」


 ステラはナノの隣に腰を下ろすと、先ほどのナノのように空に向かって両手を伸ばした。やっぱり掴めねえよ、とステラは苦笑した。


「そういえば、イーズに話したんだ。おれの夢のこと」

「そうか。いい夢だと言っていただろう?」

「うん。でも、どういう学校にするのかってきかれて、ちょっと困った。おれ、そのへん考えてなくて」

「これから考えればいい」


 ふたりの間に沈黙が生まれる。いつものステラならもっと話そうとするのに。ステラ、と呼びかけてから手を握ると、ステラは大きくて息を吸って吐いた。


「ナノ! おれ、ナノのこと騙してた」

「え?」

「おれ、ほんとは……アヴァリーに雇われて、ナノたちに近づいたんだ。青の絵画の場所を探るために。この旅で得た情報も……流してて……」


 ステラの言葉はところどころ消えてしまいそうだった。消させてたまるものかと、ナノはステラの肩を掴み自分のほうを向かせる。逸らすことを許さない。


「ステラ、それは本当か?」


 ステラの瞳は頼りなく揺れていたけれど、ナノの視線に捕らえられると覚悟を決めたように光が灯る。


「本当だ。次に行く場所や、そのときに得た情報をすべて流してた。青の絵画に誘導するように」

「……ステラは青の絵画を見たいわけではないのか?」

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