第139話
そんな弱さから目を逸らして、ユーリに敵わない自分をなかったことにしたかった。それが強さだと思っていた。
病院で目が覚めたとき、ナノはイーズの胸で泣きじゃくっていた。再びナノが自分の胸で泣いてくれたと思ったと同時に、不甲斐なさが込み上げた──やっぱり、ナノが好きなのだと息苦しいくらいに思い知った。
ナノを守るのは自分でありたい。そのためには、弱いままの自分でいるわけにいかないのに、弱虫はそう簡単に消え去ってはくれない。
「……僕は、どうしたらいいんだろ」
「知るかよ。敵に塩送るなんかやんねえよ。やりたいようにやりゃいい。おれはそう!」
「やりたいように、やる……か。ステラは強い」
こんなふうに言い切れたら。今はステラがまぶしい。敵わないとはこういうことなのだろう、と痛感する。
ステラはばつが悪そうにイーズをちらちらと見る。
「……イーズはなんでも他人軸なんだよ。自分がどうしたいかってのを考えろよ。いや、まあ……そこがイーズのいいとこなんだけど……おまえが思うほど、他人は自分の味方じゃねえからな」
「励ましてくれてるの?」
「ばーか。拗らせてんのがめんどくせえの!」
「拗らせ……。でも、うん。僕もステラの強さを見習うことにする。全部とは言わなくても、いくつか星を集めて換金するくらいの気持ちは持っておこうと思う」
「またその話かよ。なんでそんなにその話好きなの」
イーズはうん、と考える。なんとなく心に引っかかっていたけれど、理由に向き合うまではしなかった。
今ここで向き合うのは遅すぎるくらいかもしれない。
向き合うのは、今までの自分を否定してしまうような怖さがあった。
本当の自分をずっと否定し続けていたくせに。
「……無理だって思ってたことを、願ってみたかったからかな」
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