第137話
ステラのしっぽと耳の毛が一瞬にして逆立つ。
「はあ⁉︎ つか、もっと驚いたりとか怒ったりとかねえのかよ。おれはアヴァリーに青の絵画を流すつもりでおまえらと旅してたんだぞ。おまえらのこと、騙してたんだぞ!」
イーズは寒さでかじかんだ手を温めるために、両手に息を吐きかけた。
「ステラが青の絵画にそれほど興味がないのはうすうすわかってた。だから今、その話を聞いて腑に落ちた感じがするんだ」
ステラを気遣うわけでもない、イーズの本音だった。
ステラはふぁーと息を吐きながら、イーズの肩に頭を乗せた。
「……まだ殴られたりしたほうがマシだわ。そういうふうに言われるのは予想してなかった。イーズ、なんかあったら殺すとまで言ってたのに」
「まあ、怒る気持ちがないってわけじゃないよ。青の絵画を横取りするために僕たちと一緒にいたなんて、やっぱり悲しいのには違いない」
ステラは口をまっすぐに結ぶ。溢れてきたものを必死に抑えるようだった。
イーズは言葉のとおり、自分でも不思議なほどステラに対してさほど怒りは湧かなかった。ようやくステラの胸の内を話してくれたことに安堵感さえある。
「でも、話してくれてありがとう」
「なんでお礼言うんだよ。余裕ぶっててむかつく」
「余裕ぶってなんてない。僕は……たぶんナノも、ステラのことを裏切り者だなんて言わないよ」
ステラはぐっと顔に力を込め、イーズをにらむ。
ナノはステラの真実を知ったとて、ステラを見捨てはしない。それだけステラを大切な存在と認識しているから。イーズも同じだ。
ステラの言うとおり、ナノに危害を加えようものなら本当に殺してしまうかもしれないと、イーズはわりと本気で考えていた。
だけど今は、ステラのいない世界の自分があまり想像できないくらいにはなっている。それをステラに伝えるつもりはないけれど。
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