第136話

「むこうは晴れてるっぽいなあ。通り雨ならすぐ止むかな」

「うええ。濡れて寒い……」

「ちょっと待って……うん、使えそう」


 イーズは洞窟内の石をいくつか集めて積み上げると、そこにパンの包み紙をくしゃくしゃに丸めて投げ込み、マッチで火をつける。

 ステラがふにゃーと言いながら手をかざした。


 雨が吹き込んでいないところに落ちていた枝をいくつか集めて、それも投げ入れる。しばらくは燃やせそうだ。


「ねえステラ。自分を責めるのはやめてよ。僕はステラに罪悪感を植えつけるために、助けたんじゃないよ」

「わかってるけど……でも……あいつはおれを、殺そうとしてたんだぜ」


「たまたまステラがあの人の行く先を歩いてただけだろ。危なかったのはナノだったかもしれないし、僕だったかもしれない。それでもステラはナノや僕を責める?」


 ステラはぐっと唇を噛みしめる。ゆっくりと首を横に振るも、あまり納得していないようなさびしげな目をする。


「それとも、なにか殺されるような心当たりでもあるの?」

「………………」

「ステラ?」

「…………あるよ。おれは、裏切り者だから」


 ステラは膝を抱えて、長い溜息をつく。金色の瞳が揺れていた。


「……おれはアヴァリーに雇われて、青の絵画を横取りするつもりでおまえらに近づいた。だけど結局、アヴァリーから首を切られた。おれが青の絵画の情報を途中から流さなかったから。そしたら、新しく雇ったやつに殺されそうになったの。アヴァリーはおれが青の絵画を奪うんだと思ってる」


 ステラはまくしたてるような口調だった。だけどイーズへ向けているのか、どこへ向かっているのか定まらないような言い方だった。


「そう。だから僕に対して悪いと思ってるわけ?」

「……そりゃあ……」

「ふふふ。かわいいとこあるじゃない」

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