12 雨が上がったら
第135話
ふたりはネモに頼まれた鉱石や植物を背中のかごに投げ入れる。大きな石はハンマーで砕き、手のひらに乗るサイズにする。
イーズはこういう黙々と進める作業が苦ではないけれど、ステラは飽きたと言いながら植物を摘んだり、さぼったりしている。
休憩しようと川のそばまで移動し、持たせてもらったパンを広げる。ネモが夜中に突然目覚めて焼いたらしい。
ひと口かじると小麦の香ばしさが口いっぱいに広がる。ぽろぽろとパンくずが落ちるのも気にすることもなく、ふたりはパンに夢中でかぶりつく。
小鳥がやってきて、パンくずをつついていた。
「なあ、もうけがは大丈夫なのか?」
「んー……正直、本調子じゃないけど、旅をする分には問題ないかな」
「そ……そっか……ごめん……」
イーズが刺された日から、ステラは癖のように謝罪を口にする。
なんだか自分が余計なことをしてしまったような、あの行動がステラを気に病ませているのなら、イーズとしても不本意だ。
イーズ自身でも、なぜあのときに身体が動いてしまったのかわからなかった。ただ、ステラの身に危険が迫っている、というのが怖くなった。
自分が勝手に動いただけ。その結果けがを負った。悪いのはステラを刺そうとした人物であって、イーズでもステラでもない。にも関わらず、ステラは自分に非があるかのような言い方をする。
「謝んないでよ。僕は僕に従っただけ」
「でも……あれは……おれが……」
「だれのせいでもないよ。ほら、食べたらさっさと動く……ん?」
ぽつんとイーズの鼻になにか当たった。指で拭うと、水だった。
たちまち激しい雨がふたりを襲う。うわーっ、と声をあげながらふたりは近くの洞窟に逃げ込んだ。ばけつをひっくり返したような雨に、ふたりはぽかんと空の様子を窺う。真っ黒な雲が空の一部を覆っていた。
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