第134話
「形あるものはいつか朽ちるのだと、青の絵画をもって証明することで、ユーリなりにアイの死を受け入れようとしたんじゃよ。ユーリはその事実を受け入れることを自分と……ワシに課した」
「ネモさんも……」
ネモは一度目を伏せて、小さく息を吐いた。
ネモの話からすると、青の絵画自体は現存しているけれど、既に絵画とは呼べない状態にあるようだ。
ただ、それをユーリやネモが完成とするならば。ルークとナノの望みは叶わないほうがいいのだろうか。消えては浮かぶ疑問がナノの腹の中で何度もうねっている。
それに加えて、気がかりなことがあった。
「……ステラはがっかりするかもしれないな……」
「はん? ステラが? あやつは他人じゃろが」
「あ……ステラは……その、青の絵画の複製を見たそうで、原画も見たくて旅を始めたので。がっかりするかなって」
ネモは切れ長の目を思いきり見開く。そしてお腹を抱えて弾けるように笑いだした。
「ひーっ、はっはっは! 青の絵画には複製なんぞ存在せんわ! ワシが調合した、あの絵専用の特別な染料で描かれておる。複製なんぞ作るのは絶対に無理! そりゃ騙されとるな、あの黒猫!」
「え……そ、そうなんですか……」
「はーっ、見た目どおりバカな黒猫じゃのう! 帰ってきたらからかってやるわ! いっひっひ」
「や、やめてあげてください……」
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