第128話

「はん。アイの生き写しじゃのう。亡霊かと思ったわ。ちんちくりんなところも一緒じゃい。して、後ろの汚い猫とゴリラ男は?」


 汚い猫とゴリラ男、といわれてナノは一瞬ぽかんとする。ステラとイーズのことを言っているのだろうけれど、なかなか失礼な物言いだ。

 手紙の文面も刺々しかったが、実際に会うとさらに強い。


 ナノはイーズとステラをネモに紹介する。初対面で悪口のような物言いをされ、ふたりは苦笑いしていた。


「わざわざお迎えに来ていただいて、ありがとうございます。おけがもしてるのに」

「ユーリの娘だと聞いて、どんなバカ面か早う見てやろうと思っただけじゃい。ついてこい!」


 ナノとネモの後ろをイーズとステラがついていく。


「……つまり、早く会いたくて迎えに来ちまったってことか」

「だね。しっぽがすごい揺れてる……」


 服からはふさふさのしっぽが出て、ぶんぶんと横に振れているし、耳はぴょこぴょこと横に動いていた。

 ネモに案内され、三人は街の外れまでやってきた。ネモの自宅の裏は森になっており、静かな場所だった。小鳥の声や川のせせらぎが聞こえる。


「適当に座れ。ワシは腹も減ったし、喉も渇いた。食料をわけてやる」


 ネモは大きなケーキを棚から取り出し切り分ける。フルーツをたっぷり使ったタルトだった。宝石のようにきらきら光っており、ナノは思わず感嘆の声をあげた。ネモの手作りだ。

 さらにネモは奥から美しい装飾のコーヒーカップと、コーヒードリッパーを取り出す。


「おまえらはガキじゃからコーヒーまでは飲めんだろ」

「あ、飲めます」

「よかろう。飲んだこともないような高級コーヒーを飲ませてやろう。わざわざ取り寄せた豆じゃ」


 ネモは松葉杖をつきながらキッチンを行ったり来たりする。見かねたナノがネモに声をかけた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る