第124話

 今のナノをひとりにしておきたくないだけだと自分に言い聞かせ、胸のあたりをそっと押さえた。早鐘のような心音が伝わってきて、余計に焦るばかりだ。


 ステラはそっと手を伸ばし、ナノの手を掴んだ。少し冷たい。この手がずっと冷えなければいいのに、と願わずにいられなかった。


「さびしいときは……隣にいるくらいならできるし。おれでも」

「ありがとう、ステラ。わたしはいい仲間を得られたな。ステラもさびしいときは教えてほしい」


 自分がさびしいから、人のさびしさも埋める。ナノはそういうやつだとステラは思い出した。

 イーブンにしたがる。それとも借りを作りたくない?


 そういう性分なのだろうし、そういうところに惹かれるにもかかわらず、ステラは素直に頷けなかった。


「…………じゃあおれも今、さびしいってことにするわ」


 ステラはそのまま身体を倒しナノの太ももに頭を乗せた。ナノの手がステラの尖った耳を優しく撫でている。

 ナノの小さな笑い声は、ステラの中に降り注ぐ星のようで、胸が詰まって声が出なくなった。


 身を寄せればさびしさが紛れると思ったのに、余計に増幅しただけだ。もどかしくなって、ステラはナノの太ももに頬を擦り寄せた。

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