第121話
「じゃあ、なんでアヴァリーは今になって青の絵画を探し始めたんすかね。金のために殺しくらい平気でやるやつなら、その執念でユーリの居場所くらいすぐに突き止めて、青の絵画の所在を吐かせるなり絵を描かせるなりできるだろうに」
「ユーリが持っていた青の絵画は火事ですべて焼失したものとされていた。それでいて、ユーリも画家をやめて、利用価値なしだと判断したってとこだ。あのゾンビ野郎が興奮気味に話してた。が、最近になって青の絵画が現存している可能性が浮上した」
可能性の話だけで人を雇い調査を進め、邪魔な存在となれば消す。言葉にすると改めて理不尽さを思い知り、ステラとゾロは互いに眉を顰めた。
いったい、青の絵画のなにがアヴァリーを動かすのだろう。そんなにも執着できるものなのか。ステラには考えても及ばないことだし、ゾロもまた同じなのか煙草を溜息まじりに
「そういうわけだ。おまえももう青の絵画には関わらなくていい」
ゾロがワインを飲み干す。ボトルを軽く振って最後の一滴まで飲もうとしていた。
「……あ、いや……おれ、もうしばらく旅を続けます。青の絵画の所在がわかるまでは。もうちょっとでたどり着くかもしれないんで」
「ステラらしくねえな。得しないものはさっさと切り捨てるやつだと思ってたのに」
「そうなんすけど……その……」
ステラの夢が叶うのを見たいと言うふたりの、望みが叶う瞬間もステラは見届けたかった。
くだらない理由だと心の中で自嘲する。腹の足しにもならなければ、懐が潤うわけでもない。ステラにとって利益があるわけでもないのに。
自分のことなのに、心が別のところで生きているような感覚が、不可解で仕方がない。
不可解だからこそ、きちんと知りたかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます