第105話
イーズはナノの腕のタトゥーをまじまじと見る。派手で、初見ではぎょっとするけれど、ナノの白い腕にはよく映えていた。
「びっくりした。でもきれいな色だね。これ、人魚姫だよね」
「絵はユーリが描いてくれたんだ。青いマーメイドがわたしのイメージなんだって。ユーリは昔から無駄に絵がうまいんだ。ふふふ」
ナノは腕を上げながら、踊るように回る。いつもは大人しいナノがこんなに感情をあらわにするのを初めて見た。
これはユーリのなせる技なのだろう。ナノにとってユーリは特別なのだと改めて思い知らされる。
それにしてもなぜユーリはナノをマーメイドだと思ったのか。このあたりには海もないし、ナノに海のイメージはなかったし、ナノがすいすい泳ぐのもあまり想像ができなかった。
その疑問を抱えたまま、ナノと別れ、イーズはそのままユーリの元へ行くことにした。ユーリがあの絵をナノに描いた理由をすぐにでも知りたかったからだ。
ユーリの家には派手な人がいた。すらりと背が高く、この村では見かけないような服装や化粧をしている。耳だけでなく顔にもピアスが開いていた。
女の人のような服装をしていたけれど、どうやら男性のようだった。
ユーリよりも先に彼がイーズに気づき、ユーリを呼ぶ。
「おう、イーズ。どうした?」
「ええっと……ナノのタトゥーを見て……ちょっとききたいことがあったから……」
「あら、タトゥーに興味があるの?」
派手な男がずいっとイーズに顔を近づける。いい匂いがしたけれど、イーズは嗅ぎ慣れていないので鼻がむずむずした。
「レオ、あんまグイグイいくなよ。イーズがびびってる」
「あら、ごめんなさい」
「イーズ、こいつは俺の昔からの友だち。レオっていうんだ。タトゥーの彫り師なんだけど……ナノから聞いたか?」
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