第93話
「ふふ……ああ、なんだか胸が軽くなった。お腹は重いけど」
「わたしもです。さっきからげっぷが止まらない」
「あらやだ」
レオが苦笑しながらナノの頭を撫でる。不意にあたりをきょろきょろと見回して、ナノの顔をじっと見つめる。
なんだろう、とナノが身構えると、レオはいたずらっ子のような顔をした。
「ねえナノちゃん。ナノちゃんはもう恋をするつもりはないの?」
「うーん……今すぐには考えられないです」
「そっか」
レオはそれ以上なにも言わずに、ただ静かに笑っているだけだった。
翌朝、レオは珍しく眼鏡をかけていた。大きな丸眼鏡はレオの目を小さく見せている。
レオは船着場まで見送りにきてくれた。旅の途中で食べられるよう、おやつも持たせてくれたし、ネモへの手土産も用意してくれた。
名残惜しいけれど、ナノたちは次へ進まなければならない。青の絵画は目前だ。必ず持ち帰ってルークに渡さねばという使命感で、ナノの心はいっぱいだった。
「それじゃあ。ネモちゃんによろしくね」
「はい。レオさんもお元気で。また必ず」
「もちろん。旅が終わったら連絡をちょうだいな。待ってるわ」
レオとナノはしっかりと抱擁を交わす。離れた後もレオの温もりが残った。この先もずっと消えない。ナノは胸に手を当てて、レオの温もりを確かめた。
「ナノ、なんかすっきりした顔してね?」
「そうか? いつもどおりだが」
「んー……なんか違う」
「うーん……レオさんとガールズトークに花を咲かせたからかもしれないな」
ナノは昨晩のことを思い出していた。あの後、レオの酒に付き合って遅くまで起きていた。ユーリの話、青の絵画の話、これからの話をたくさんして、これからすべきことについて整理できた。きっとそのおかげだろう。
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