第89話

 アヴァリーがどういうルートで青の絵画を探しているのか、ナノには検討もつかない。金を積んでナノが知り得ないルートから青の絵画に近づいているのかもしれない。できればアヴァリーより早く青の絵画にたどりつきたかった。


「ステラも原画を見たいと言っていたし、なんにせよわたしたちで先に見つけないと」

「そうだね。そういえば……絵を見つけたらナノはどうするつもりなの?」

「ん? ルークさんに見せるんだ」


「その後だよ。青の絵画はすべてルークさんに渡すの?」

「そのつもりだったけれど……」


 ナノはルークの姿を思い浮かべる。ルークが果たして絵を引き取ってくれるだろうか。仮にルークが引き取ったところで、その後を継いでくれる人物もいないだろう。


「考えてなかった……」

「あはは、やっぱり。じゃあさ、もしよければ一枚僕にくれないかな。みんなの旅の思い出として欲しい。おじいちゃんになっても、絵を見ながら楽しい旅だったなあって思い出したい」


「それ、いいな。正直、ユーリがお母さんとデートして描いた絵だと聞いて複雑な気分だったが……旅の思い出としてなら素直な気持ちで見れそうだ。というか、イーズは旅を楽しんでくれてるのか」


 イーズは意外そうに目を見開いた後、ああ、と言いながら苦笑いをする。

 そして鞄の底からナイフを取り出した。

 ステラと出会ったときに、ステラがイーズに預けたナイフだった。


「最近は楽しいかな。ステラはなんかあったら殺してくれていいぜ、とか言ってたけど」

「そういえばそんな約束もしたな。つい数ヶ月前ではあるけれど、なんだか遠い昔みたい」

「うん。だから、これを返さなくちゃって思ってる。僕には必要ないから」


 イーズは折りたたまれたままのナイフを太陽にかざした。持ち手にあたる部分はところどころ革が破れて、ずいぶんと年季が入っているようだった。

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