第88話
それからしばらく三人はレオの元で過ごした。
このロッジハウスはレオの親戚が所有しているもので、普段は旅人や観光客に貸し出している。といっても、島にはなにもないからめったに客なんてほとんどいないのだとレオは笑っていた。
ユーリが青の絵画の保管を頼むであろう人物──ネモという獣人だと、レオから聞いた。
彼女からの手紙の返事を待って出発することになっている。いい返事が来るといいけど、とレオは悩ましげな顔をしていた。
ひとまず返事が来るまで、ナノはこの島でのんびりと過ごしている。今日は海辺に釣りをしにきた。
「あれ、ナノひとり? ステラは?」
「郵便局に行って、小売店におやつを買いに行くと言っていた。もうだいぶ経つけれど……」
「寄り道でもしてるのかなあ。まあ、いいけど」
イーズはナノの隣に腰を下ろした。イーズも釣り竿を海面に垂らしている。
波とそよ風の音がする。ふたりはぽつりぽつりと話しながら、自然の音にときおり耳を傾けた。
「なんだか落ちつく」
「そうだねえ。ゆっくり休むときなのかもね、今は」
イーズが釣り竿を大きく振りかぶる。浮きが水面に着水する。ほどなくして釣り竿に引きがあり、イーズは立ち上がり思いきり腕を振り上げた。
釣り針には魚が食いついていて、太陽の光に反射して虹色に輝いていた。
ナノが横から網に魚を入れると、網の中で魚が勢いよく跳ねる。水しぶきを浴びながらバケツの中に魚を放つと、安心したように泳ぎ始めた。
「それにしても……ユーリの親戚の人……アヴァリーさんだっけ? 青の絵画を探してるって言ってたよね」
「うん。ルークさんの手紙によれば、人を雇って探し回っているそうだ。ルークさんから連絡もないし、まだ見つけてはいないのだろうけど」
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