第82話

「親御さん、適応能力高いっつーか……おおらかだな……。まあ、その親にしてこの子ありなのか……」


 レオの両親も最初は驚いていたけれど、ブルースター家は他人に迷惑をかけなければなにをしてもいい、という家訓なので特に大きな問題にはならなかった。


 レオはスカートをつまんでくるくると回った。こういうのが受け入れられない人もいることはレオもわかっているけれど、ユーリは拒否をしないと疑わなかった。


「それにしても、なんで彫り師なんだよ」

「うちに来てる職人さんが素敵なタトゥーを入れててね、彫り師を紹介してもらったんだ。変わった人だったけれど、とてもかっこいい仕事をするの。アタシもこうなりたいって思っちゃったから、弟子入りさせてもらったの」


「そっか。がんばれよ。そうだ、いつか俺が描いた絵をだれかの身体に彫ってやってくれよ。そのためにもっといい絵を描けるよう、嫌なことも大変なことも我慢するから。楽しみを作っときゃ、大変なことも楽しくなるしな」


 大賛成! レオはユーリに抱きついて、ぎゅうと力を込めた。痛いと笑うユーリの声がレオの頭の中でいつまでも響いていた。



「え、ユーリに恋人!?」


 久しぶりに会ったユーリから告げられたのは、恋人の存在だった。驚きのあまりレオは持っていた荷物を落としてしまい、紙袋から染料の瓶がころころと転がった。ユーリはそれをひょいと拾い上げ、紙袋の中に戻す。


「どんな人?」

「どんな……うーん、ちょっとレオっぽいかもな。まあ、レオよりはずっとおとなしいけど、ときどきはっとするようなことを言う」


「そっか……あ、だからあんまり遊んでくれなかったんだ! なるほどお、ふうん、なるほど。大切なことなんだから、言ってほしかったわ」

「悪かったって。なんかその……恥ずかしかった……今言ったんだから、勘弁してくれよ……」

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