第81話
「まあ! 変態なんてユーリには言われたくないよ。この前街ですれ違ったお姉さんをいやらしい目で見てたユーリにはね」
「いや……それはその……年頃の男子は普通だろうが! あのお姉さんおっぱいすごかったし……おまえだって見てただろ!」
「まあ! いやらしいわ! ぼくはあんなにじろじろ見てないよー」
このやろ、とユーリはレオの両頬を思いきり引っ張った。マシュマロのように伸びていく頬。伸びすぎだろ、と引き気味な顔をしつつも、ユーリは楽しそうだった。
仕返しにユーリの頬も引っ張ったら、レオと同じように伸びる。変な顔だと笑うと、おまえもなとユーリはもっと笑った。
卒業後、ユーリとレオは別々の道を歩んだ。
ユーリは期待の若手画家として活動し、レオも画家となるはずだったが──。
「ユーリ見てよ。アタシ、タトゥー入れたの! かわいくない? 今日から彫り師の修行を始めたの!」
「おわ、タトゥー、いいデザインだなあ……じゃねえよ! ちょっと待て。話についていけねえわ!」
レオの二の腕には赤いバラのタトゥーが入っていた。つい先日彫ってもらい、今は経過を見ているが特にトラブルはなさそうなので見せにきたというわけだ。
ユーリはすっかり豹変した友人に驚きを隠せなかった。
服装はいわゆる女性が好むもので、顔もしっかりと化粧が施され、いくつかシルバーピアスも開いている。おまけに口調まで変わっているので、無理はない。
レオは卒業したら好きな格好をするのだと、三年間思い続けていた。正確には、当時思い描いていたイメージとは異なるけれど、今はこういう格好が好きだった。好きな自分になっただけのことだった。
「……かわいくないかな?」
「ふ……ふはは。ギャップすごすぎ。はいはい、かわいいかわいい」
「えーへへ。アタシののパパとママもね、かわいいって褒めてくれたんだ。このスカートはママの手作り」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます