7 レオとユーリ

第76話

 ユーリ・シオン。

 若干十四歳でありながら、芸術の神様に愛された子と呼ばれ、多くの芸術関係者が彼のことを褒め称えた。絵を発表すれば、頼んでもいないのに様々な評価を下され、会ったこともない人間が買い手として手をあげ、芸術のことなどまったくわからない人間が天才だと持ち上げる。


 そんな中で育った少年は、わずか数年ですっかり捻くれてしまった。

 思春期というのは柔らかい粘土のようなもので、刺激が加わるほど歪な形になることもあれば、不自然なほどまっすぐにもなるし、突如ぽっきり折れたりもする。

 それを体現していたのが、ユーリという男だった。


 レオがハイスクールに入学したとき、ユーリは同級生でありながらすでに有名人だった。

 同級生の女子たちは色めき立ち、男子たちもユーリと仲よくなることで自分の価値を高めようとしたけれど、捻くれたユーリはだれひとり相手にしなかった。


「ユーリはお高く止まってて感じが悪い」

「レオの爪の垢を煎じて飲ませてやればいいのに」


 レオの周りにいる友人たちはみんなそんなことを言い始めた。

 あんなにユーリと仲よくなりたがっていたくせに、半年も経たないうちにみんな口を揃えてユーリを悪く言うようになっていた。編入のくせに生意気なんだよなとも、言われるようになっていた。


 レオはミドルスクールから一貫でこの学校に入学している。ミドルスクールから入学し、エスカレーター式に入学する生徒は環境的に恵まれている人間ばかりだ。そのせいか、自分たちは選ばれているという意識が強い者も多かった。


 恵まれている者こそ強いとみんな思いがちだ。だから自分の強さを補うように、さらに強い者に群がる。世界はそういうふうにできているらしかった。

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