第74話
「手紙に書かれてた……青の絵画のことだけど」
三人はぴんと背筋を伸ばした。
「残念ながら、アタシは所在を知らない。ただ、ユーリが持ち出した原画は七点のうち三点。これはユーリから聞いたから間違いない。残りの四点は早々に売られてしまったとユーリが嘆いていたわ」
「嘆いた? 売るために描いてたんじゃないんすか? ユーリは画家でしょ?」
ステラの問いにレオはゆっくりと首を振る。たしかにユーリは画家として活動していたけれど、売却用の絵とそうでない絵をわけていたはずだったそうだ。
「青の絵画は……なんていうのかしら、ユーリがユーリのために残した絵だった。だから売却するつもりはなかったのよ。だけど、発表したときの反響があまりに大きくてね。お金に目が眩んだユーリの親戚が勝手に売り払ったの」
「その親戚って……アヴァリーという男ですか」
無意識だが、ナノの声は震えていた。レオは一瞬目を見開いたが、目を閉じてこくりと頷いた。
レオの話によれば、四点はすでにアヴァリーによって売却され、ユーリが絵に込めた思いなど知る由もない人間が手にしている。特に二点目以降は青の絵画を手にしたいだけの人物に渡ってしまったそうだ。いろんな価値が青の絵画には付加されていった。
「……残りの三点はどうして売却されなかったんですか? アヴァリーは青の絵画が七点あるって知ってるから、今も絵を探しているんですよね」
「今も探している?」
ナノの言葉にレオは意外そうな顔をした。手紙では告げていなかったけれど、ヴェルデ村を出る前にアヴァリーがナノの自宅を訪ねてきたこと、情報を自分によこすようにと言ってきたこと、そしてルークの手紙の内容についてレオに伝えた。
レオはしばらく考えたのち、なるほど、と言った。
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