第73話

「なあ、ナノとイーズがタトゥー入れたのっていつ頃なの? 痛くないの?」


 ステラはすっかり酔いが回っているようだった。ぽっと頬が赤くなり、ふにゃふにゃした口調でイーズに絡んでいる。久しぶりの飲酒らしかった。イーズも顔を赤くしつつ、ステラを押しのける。


「三年くらい前だな。旅の途中でレオさんがヴェルデ村に立ち寄ってくれて……毎朝火傷を隠すためにペイントをしていたわたしを見かねて、タトゥーを入れてくれた。イーズも……あのときに入れたのか?」

「うん。僕も入れたいなあって思って」

「で、その絵柄を? おまえ、大胆だな」


 イーズはこくりと頷く。


「ユーリがいくつか描いてくれて、これがいいって思ったんだ。彫るときはまあ痛かったけど」

「そうそう。彫るときも、アタシが集中してるのに、隣でユーリが煽る煽る。痛いって言っていいんだぞ〜ってイーズちゃんにずっと言ってて。で、イーズちゃんは意地でも声出さないようにして力が入っちゃうし。あのときはさすがに頭にきてユーリを追い出したわ」

 

 その様子がナノには容易に想像できた。

 イーズの隣で「ユーリってお調子者だったんだな」とけらけら笑った。それに対し、ほかの三人はお前が言うなと同時に突っ込んだ。酒で気分がよくなっているステラはつゆほども気にしていなかった。


「レオさんってユーリの友だちだったんすよね。昔から仲よかったんすか?」

「ええ。ユーリと出会ったのは二十年くらい前かしら。ハイスクールに入学したときだった。そこからの付き合いなの。死んだのなんて、まだ信じられないくらいだわ」


 そう言ってレオはワインを飲み干した。ふう、と溜息に似たものが漏れ出る。青い瞳にはゆらゆらと間接照明の光がゆらゆらと映り、まるで瞳が揺れているようだった。


 ふう、と自分を落ちつかせるように深呼吸をした後、レオは真剣な顔つきになる。

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