第69話

 手紙には三番と書いてある。一番奥にあるロッジハウスのようで、三人はそこを目指して進もうとした。


「ナノちゃ〜〜〜〜〜ん!」


 後ろから名前を呼ばれ、ナノとイーズはさっと振り返る。ステラもゆっくりと顔を上げて、声のするほうを見ていた。

 長い金髪をひとつにくくり、耳や顔には銀色のピアスがいくつも光っている男が、満面の笑みで手を振りながら三人に近づいてくる。


 ナノは反射的に男に向かって駆け出し、ふたりはがっしりと抱き合う。男はナノを軽々と持ち上げて、そのまま振り回す。彼の青いワンピースの裾が花開くようにふわりと舞った。


「まさかあれがレオ・ブルースターか? なんか情報量多いやつだな……」

「はは、たしかに派手だよね。レオさんは」

「派手とかいうレベルじゃねえだろ。なんかもっとこう……いかついイメージしてたわ」


 ナノを地面に降ろし、その大男──レオ・ブルースターがイーズとステラに向かって歩いてくる。花が咲くように、きゃあ、と声をあげながらステラごとイーズに抱きつく。


「イーズちゃあああん! やだあ、こんな男前に育っちゃって! あら、個性的な襟巻きつけてるわね」

「あ、はは……襟巻きじゃなくて、船酔いの猫ちゃんです」

「だーれが猫ちゃんだよ! おまえぶっ殺すぞ」


 ステラはぴょいと地面に飛び降りる。船から降りたときよりも顔色がいささかよく、しっかりと立てているようだった。


「獣人くんだったのね! ごめんなさい。アタシ、レオ・ブルースター。彫り師をしながら世界を旅してるの。よろしくね」


 レオはステラにむかって手を差し出す。ステラがその手を握ると、ものすごい力でステラを抱き寄せた。なにが起こっているか理解できないといった様子で、ステラの口からは舌の先っぽがわずかにはみ出て、視線はあてもなくさまよっている。

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