第61話
ステラは港町でちびっことぶつかったときに拾ったゴミを鞄から取り出す。水でふやかすと膨らんで、中に書いてあることが読める仕組みになっている。
船の中で酔いと戦いながらどうにか読んで、ステラはひどく後悔した。
「この手紙、マジで胸糞悪かったっす」
「ボスからの直々のラブレターをそんなふうに言うなよ」
「おれ、手紙で情報はしばらく得られないって言ったんすよ。嘘なんかついてねえのに、情報独り占めするんじゃないかとか、人のこと疑うようなことばかり書いてあってさあ」
「ふふ、でも、おまえならボスの気持ちがわかるんじゃねえの? 金に取り憑かれたおまえなら」
ゾロはアイスティーをぐびと飲み、口元だけを微笑みの形にした。
こういうとき、怯んでしまうとつけ込まれる。隠したいものは強い心をもって最後まで隠しとおさなければならない。ステラも同じように微笑むよう努めた。
貧しい場所に住む獣人たちが人間と共存するための手段を教えてくれたのがゾロだった(共存といえば聞こえはいいけれど)。ステラやここにいる獣人たちへ生きる術を授けたといっても過言ではない。
「ステラさんは昔からお金が好きなの?」
ちびっこは逆さまになった三日月のような形に目を細めた。ちびっこといえど、しっかりとゾロに教育されているのがまる分かりで、ステラはちびっこから目を逸らして水を飲んだ。
「お金が好きじゃないやつなんているかよ」
岩のような身体を持つ熊の獣人、ジャンボがにたりとする。
「うん、好きだよ。お金が一番好き。お金は裏切らないし」
「金のために人は人を裏切るけどな」
ゾロは煙草に火をつけて煙を吐く。流れてきた白い煙を手ではらって、ステラは腕を組む。それはおれのことですか、と言うと、ゾロは細い目をさらに細めた。
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